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ポリオ 2023年現在

(IASR Vol. 44 p113-114: 2023年8月号)
 

急性灰白髄炎(ポリオ)は, ポリオウイルスが中枢神経に感染し, 運動神経細胞を不可逆的に障害し, 弛緩性麻痺等を生じる感染症である。ポリオウイルスには, 3つの血清型(1, 2, 3型)がある。治療薬は存在せず, 3つの血清型のポリオウイルスに対するワクチン接種が, ポリオの発症予防・流行制御の基本戦略になる。

 

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2018年のSalmonella enterica serovar Oranienburg菌血症集積事例株と同一クローン由来株による新たな感染事例と各地の食品取り扱い従事者からの同クローンの分離

(IASR Vol. 44 p127-128: 2023年8月号)
 
背 景

2018(平成30)年8月, 鹿児島市を中心としたSalmonella enterica serovar Oranienburg(S. Oranienburg)による菌血症の集積事例(12例)が発生し, これらが同一クローン由来株に起因することをIASRに報告した1)。その後, 集積事例由来株(12株)と海外分離株(約1,600株), 国内分離株(25株)について全ゲノム系統解析を実施した結果, 国内分離株のうち集積事例とは関連のない鹿児島県の食品取り扱い従事者糞便由来株2株が集積事例株と同一クローン由来であることが明らかとなった2)。そのため, 共通感染源が存在する可能性を考え, 鹿児島県を中心にS. Oranienburgによる食中毒事例・感染事例を継続的にモニタリングしていたところ, 2022年7月に鹿児島県内の同じ地域で関連のない2人の患者(30代男性および3歳男児。ともに特記すべき基礎疾患なし)から本菌が分離された。

 

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ダニ媒介脳炎における検査法の評価および後方視的調査結果について

(IASR Vol. 44 p128-130: 2023年8月号)
 
背 景

ダニ媒介脳炎(ダニ媒介性脳炎, Tick-borne encephalitis: TBE)は, フラビウイルス科フラビウイルス属に分類されるTBEウイルス(TBEV)の感染によって起こるダニ媒介感染症である。TBEVは自然界においてマダニとげっ歯類との間に感染環が維持されており, ヒトへの感染は主にマダニの刺咬による。日本では, 1993年に国内初症例が北海道内から報告され(表1の症例1)1), 患者発生地域に生息するマダニ, 野ネズミおよび放し飼いのイヌ等から極東型TBEV(致命率:約30%)が分離された2,3)。その後, 2016年に2例目の患者が北海道内から報告され(表1の症例2), 当該患者は治療の甲斐なく亡くなった4)

 

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カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(carbapenem-resistant Enterobacterales: CRE)病原体サーベイランス, 2021年

(IASR Vol. 44 p130-131: 2023年8月号)
 

カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)病原体サーベイランスは, 通知(健感発0328第4号, 2017年3月28日)に基づき実施されている。感染症発生動向調査事業年報によると, 2021年第1~53週のCRE感染症の発生動向調査届出(患者報告)数は2,066例であった。本稿では, 病原体検出情報システムに登録された検体採取日が2021年1月1日~12月31日の1,441株(2023年3月10日現在)の概要を示す。1,441株のうち, 1,395株(96.8%)にはCRE感染症の発生動向調査届出患者由来であることを示す発生動向報告IDの記載があり, CRE感染症届出患者1,383名由来と考えられた。なお, 残る46株(3.2%)には発生動向報告IDの記載がないため, 保菌例など臨床的な届出基準を満たさない患者由来株が含まれる可能性があるほか, 同一患者分離株の判別が困難なため, 分離患者数は明確ではない。

 

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大阪市内において検出されたロタウイルスG11について

(IASR Vol. 44 p131-132 2023年8月号)
 

ロタウイルスAは, 乳幼児に重症の急性胃腸炎症状を引き起こすウイルスで, 11本の遺伝子分節からなる2本鎖RNAゲノムを有する。11本の遺伝子分節は6種類の構造タンパク質(VP)と6種類の非構造タンパク質(NSP)をコードしている。その遺伝子型の組み合わせはVP7-VP4-VP6-VP1-VP2-VP3-NSP1-NSP2-NSP3-NSP4-NSP5の順にGx-P[x]-Ix-Rx-Cx-Mx-Ax-Nx-Tx-Ex-Hx(xは数字)と表記される。外殻タンパク質であるVP7(G型)およびVP4(P型)は中和抗原を有し, 遺伝子型別の基礎として広く用いられてきた。国内においては病原体検出情報システムを通じてVP7の遺伝子型の報告がなされており, G1, G2, G3, G8およびG9が流行の主流である1)。ただし, わが国では2020年10月からロタウイルスワクチンが定期接種化され, 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)流行の影響も受けて, 近年のロタウイルスAの検出報告数は非常に少ない傾向が続いている。

 

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東京都で発生したレプトスピラ症の国内感染例の報告

(速報掲載日 2023/8/29) (IASR Vol. 44 p145-146: 2023年9月号)
 

都内のそうざい店の従業員で, レプトスピラ症の国内感染例と診断した1例を経験したため報告する。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan