国立感染症研究所

国立感染症研究所長より

平成28年度を迎えて

国立感染症研究所長
倉根一郎

 平Kurane成28年4月1日、新たな年度が始まりました。前年度も国立感染症研究所が所として対応すべき事案が国内外で発生しました。西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行、韓国におけるMERSの流行は収束を見ましたが、年度後半には蚊媒介性ウイルス感染症であるジカウイルス感染症が特に中南米で大流行し、現在も続いています。これらの事案でも明らかなように、世界のある地域で発生した感染症は瞬く間に国境を越えて広がっていきます。国立感染症研究所は、これらの事案に迅速に対応し、厚生労働施策のための基盤を確立しました。今後も、国立研究機関として、我が国にとって脅威となる感染症の発生を迅速に探知・解析し、拡大を阻止するための科学的知見を行政、専門家、国民に提供することにより、国民の皆様の健康に貢献してまいります。

 感染症に対する国の施策には、その基盤となるデータを常に収集・解析し、さらに検査のための技術を継続的に改良し維持する必要があります。国立感染症研究所はサーベイランス業務として、国内で発生する感染症の患者に関する情報、感染症を起こす病原体の情報を受け取り、集計・解析し、国及び都道府県等に還元していますが、これらの情報は行政施策のための基盤として用いられています。また、情報は月報、週報やホームページ等を通じ広く国民の皆様にも提供されています。さらに、レファレンス業務として、我が国の感染症の病原体検査のための技術開発や、試薬の準備を行い、地方衛生研究所等に技術移転するとともに、検体を受け取り検査し、結果を迅速にお返ししています。このようなサーベイランス業務、レファレンス業務においては、地方衛生研究所との連携が必須です。改正感染症法が平成28年4月1日施行されることに伴い、全国の地方衛生研究所とのネットワークの下、イコールパートナーとして連携を一層強固なものにし活動してまいります。

 感染症の克服のためにはワクチンが必須の武器であることは論を待ちません。国立感染症研究所は、生物学的製剤(ワクチンおよび血液製剤)の国家検定を通じて、国民の皆様に有効で安全なワクチン、血液製剤を供給する役割を果たしています。国内で製造された製剤であれ、海外から輸入された製剤であれ、国立感染症研究所における国家検定に合格したもののみが国民の皆様に使用されます。近年、我が国で使用されるワクチンの種類の増加や、定期接種に供されるワクチンの増加にともない、品質管理業務量の増加は著しいものがありますが、国民の健康に直結する業務として、精力的に取り組んでまいります。国立感染症研究所の特徴としてこれらの業務を行っている職員のほとんどが、研究者としても国内のみならず世界に通じるレベルでの研究を行っていることがあげられます。これは、感染症サーベイランス、レファレンス活動および生物製剤品質管理がいずれも科学的研究基盤の上に成り立つものであるとの考えによるものであり、これら通常業務が感染研において高いレベルに維持されている所以でもあります。

 感染症に国境はないことから、国立感染症研究所の業務は世界保健機関(WHO)、特にWHO西太平洋事務局(WPRO)との強い連携の下に行われています。また、中国、韓国、台湾、ベトナム、インド、インドネシア、モンゴル等、特にアジア各国・地域の国立研究機関とは協定を結んでおり、日々の情報交換や、相互の国において毎年行われる発表会を通して、日本の感染症対策の基盤となる情報が得られる体制ができています。さらに、ワクチン等の品質管理業務においてもWHOとの連携のもと世界基準での活動を進めています。中国、韓国、ベトナム等の品質管理担当の国立機関とも緊密な連携を取るとともに、アジア全体におけるワクチン品質管理の向上にも貢献をしています。また近年、世界的に特に大きな問題となっている薬剤耐性菌に対する対策においても、院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)等の活動を通して一層の貢献を行ってまいります。

 国立感染症研究所村山庁舎にある高度安全実験施設は1981年に建設されました。本施設は長きにわたり本来の目的であったレベル4施設としての稼働が行われておらず、レベル3施設としての稼働にとどまっていましたが、平成27年8月7日厚生労働大臣によりレベル4施設として指定を受けました。この指定により国立感染症研究所はレベル4施設を用いた感染症対策に貢献できることとなりました。今後も感染症対策における本施設の重要性をさらに理解していただけるよう努めるとともに、地域の方々に一層信頼いただけるよう安全対策等に十分留意して施設運営をしてまいります。

 これまで進めてきた生物学的製剤の品質管理法の改良、地方衛生研究所との協力体制の充実、アジア各国の研究所との連携、全国の各大学と締結している連携大学院などを通じた若手研究者の育成、アウトリーチ活動の強化、については今後も継続して発展させてまいります。昨今の経済状況等から国立感染症研究所を取り巻く状況は決して穏やかなものではありませんが、所員は “国民のための研究所、国さらに世界に必要とされる研究所”として、より高いレベルでその役割を果たすべく、日々奮闘しています。国立感染症研究所は、国民の健康を守る研究所として、皆様の期待に応えるべく業務の一層の推進を図ってまいります。本年度もよろしくお願い致します。

 

 

最終更新日 2016年4月05日(火曜)16:24

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