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国立感染症研究所インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センター第一室

 

全国地方衛生研究所

 日本は世界最大の抗インフルエンザ薬使用国であり、薬剤耐性株の検出状況を迅速に把握し、自治体および医療機関に情報提供することは公衆衛生上重要である。そこで全国地方衛生研究所と国立感染症研究所では、ノイラミニダーゼ阻害薬のオセルタミビル(商品名タミフル)、ザナミビル(商品名リレンザ)、ペラミビル(商品名ラピアクタ)およびラニナミビル(商品名イナビル)、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬のバロキサビルマルボキシル(商品名ゾフルーザ)ならびにM2阻害薬のアマンタジン(商品名シンメトレル)に対する薬剤耐性株サーベイランスを実施している。

 

 

 薬剤耐性株サーベイランスは、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に基づく施策として位置づけられた感染症発生動向調査事業として実施されており、検体の収集については感染症発生動向調査事業実施要綱に規定されている。

すなわち、都道府県が関係医師会等の協力を得て選定した病原体定点医療機関において、インフルエンザ あるいはインフルエンザ 様疾患患者から検体が採取され、インフルエンザの流行期には少なくとも週1検体、非流行期には少なくとも月1検体が地方衛生研究所に送付される。

各地方衛生研究所において検体から分離されたウイルス株は国の感染症サーベイランスシステムに登録され、登録株の約10〜15%がコンピューターで無作為抽出された後、国立感染症研究所に送付される。

国立感染症研究所では、原則として送付されたすべてのウイルス株について解析を行い、国内外に向けて随時結果を報告している。

 

 

 下記の表に、遺伝子解析により薬剤耐性マーカーを検出した結果ならびに薬剤感受性試験を行った結果の集計を示す。集計結果は随時更新される。

ノイラミニダーゼ阻害薬については、世界保健機関(WHO)の基準に準じ、薬剤感受性試験においてA型ウイルスでは100倍以上、B型ウイルスでは50倍以上の感受性低下が確認された場合に耐性ウイルスと判定する。

キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬については、WHOの暫定基準に準じ、薬剤感受性試験において3倍以上の感受性低下が確認された場合に感受性低下ウイルスと判定し、合わせて薬剤耐性マーカーの検出結果を示す。

M2阻害薬については、薬剤耐性マーカーの検出結果を示す。

 
 

2022/2023シーズン  (データ更新日:2023年8月21日)NEW

  dr22 23j20230821 1s
  表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
  表2.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
  表3.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 検体採取週別
  表4.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別
  表5.エンドヌクレアーゼ阻害薬耐性変異株検出情報 報告機関別
   
  2021/2022シーズン  (データ更新日:2023年2月2日)
  表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
  表2.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
  表3.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 検体採取週別
  表4.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別
  表5.エンドヌクレアーゼ阻害薬耐性変異株検出情報 報告機関別
   
  2020/2021シーズン  (データ更新日:2021年07月27日)
  表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
  表2.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
  表3.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 検体採取週別
  表4.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別
  表5.エンドヌクレアーゼ阻害薬耐性変異株検出情報 報告機関別
   
  2019/2020シーズン  (データ更新日:2021年08月18日)
  表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
  表2.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
  表3.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 検体採取週別
  表4.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別
  表5.エンドヌクレアーゼ阻害薬耐性変異株検出情報 報告機関別
   
  2018/2019シーズン  (データ更新日:2019年12月27日)
  表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
  表2.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
  表3.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 検体採取週別
  表4.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別
  表5.エンドヌクレアーゼ阻害薬耐性変異株検出情報 報告機関別
   
  2017/2018シーズン  (データ更新日:2019年09月24日) 
  表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
  表2.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
  表3.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 検体採取週別
  表4.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別
  表5.エンドヌクレアーゼ阻害薬耐性変異株検出情報 報告機関別
   
  2016/2017シーズン  (データ更新日:2020年01月27日)
  表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
  表2.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
  表3.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 検体採取週別
  表4.抗インフルエンザ薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別
   
  2015/2016シーズン  (データ更新日:2020年01月27日)
  表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
  表2.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
  表3.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 検体採取週別
  表4.抗インフルエンザ薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別
   
  2014/2015シーズン  (データ更新日:2016年03月04日)
  表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
  表2.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
  表3.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 検体採取週別
  表4.抗インフルエンザ薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別
   
  2013/2014シーズン  (データ更新日:2015年04月23日)
  表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
  表2.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
  表3.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 検体採取週別
  表4.抗インフルエンザ薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別
   
  2012/2013シーズン  (データ更新日:2014年3月10日)
  表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
  表2.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
  表3.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 検体採取週別
  表4.抗インフルエンザ薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別
   
  2011/2012シーズン  (データ更新日:2013年4月11日)
  表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
  表2.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
  表3.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 検体採取週別
  表4.抗インフルエンザ薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別
   
  2010/2011シーズン  (データ更新日:2013年2月6日)
  表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
  表2.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
  表3.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 検体採取週別
  表4.抗インフルエンザ薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別
   
  2009/2010シーズン  (データ更新日:2013年2月6日)
  表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
  表2.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
  表3.抗インフルエンザ薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別

 

 

 

 

 

ブタの日本脳炎抗体保有状況 -2023年度速報-

(2023年8月16日現在)

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 日本脳炎は、日本を含め東南アジアを中心に広く常在した疾患で、日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus: JEV)に感染した者のうち100~1,000人に1人程度が発症すると推定される重篤な急性脳炎である [1]。感染経路は、主にイエカ属の蚊(日本では主にコガタアカイエカ)による吸血でJEVに感染したブタ等を刺咬・吸血したのちにヒトを吸血することで感染する。

  1960年代までは毎年夏から秋にかけて多数の日本脳炎患者が発生しており [2,3]、ブタの感染状況からJEVが蔓延している地域に多くの患者発生がみられた。1960年代の日本脳炎の患者が多数発生していた環境では、日本脳炎患者が検出される時期に先行してブタのJEVに対するHI抗体の上昇が確認されている [4]。1992年以降、日本脳炎患者の報告数は、2016年の11例、2019年の10例を除き全て一桁の報告でブタの感染状況と比較して患者発生数は低く、環境中のウイルス活動状況と必ずしも一致していない。しかし、ブタの抗体保有状況はウイルス陽性蚊の存在している地域を間接的に示唆するデータと推測され、少なくともこのような地域ではヒトへの感染リスクの存在する地域と考えられる。2015年には10か月齢の小児にも感染が確認され[5]、2022年は千葉県、広島県、熊本県から症例が報告されている。

 感染症流行予測調査事業では、全国各地のブタ血清中のJEVに対する抗体保有状況を赤血球凝集抑制法(Hemagglutination inhibition test: HI法)により測定し、JEVの蔓延状況およびウイルスの活動状況を調査している。前年の秋以降に生まれたブタがJEVに対する抗体を保有し、さらに2-メルカプトエタノール(2-ME)感受性抗体(IgM抗体)を保有している場合、そのブタは最近JEVに感染したと考えられる。下表は本年度の調査期間中におけるブタの抗体保有状況を都道府県別に示しており、JEVに最近感染したブタが認められた地域を青色、それに加えて調査したブタの50%以上に抗体保有が認められた地域を黄色、80%以上に抗体保有が認められた地域を赤色で示している。

 本速報はJEVの感染に対する注意を喚起するものである。それぞれの居住地域における日本脳炎に関する情報にも注意し、JEVが活動していると推測される地域においては、日本脳炎の予防接種を受けていない者、とくに乳幼児や高齢者は蚊に刺されないようにするなどの注意が必要である。

 なお、日本脳炎定期予防接種は、第1期(接種回数は初回2回、追加1回)については生後6か月から90か月に至るまでの間にある者、第2期(1回)については9歳以上13歳未満の者が接種の対象であるが、平成7年4月2日(1995年4月2日)から平成19年4月1日(2007年4月1日)までに生まれた者で積極的勧奨の差し控えなどにより接種機会を逃した者は、20歳になるまでの間、定期接種として合計4回の日本脳炎ワクチンの接種が可能である(詳細は厚生労働省ページを参照)。また、平成19年4月2日(2007年4月2日)~平成21年10月1日(2009年10月1日)までに生まれた者に対しても、生後6か月から90か月未満のみならず9歳以上13歳未満の間にも、第1期(3回)の不足分を定期接種として接種可能である。ただし、生後90か月(7歳半)以上9歳未満は定期接種として接種することができないので、注意が必要である。市区町村からの案内に沿って接種を受けていただくようお願いしたい[6,7]。

抗体保有状況
(月別推移)


抗体保有状況
(地図情報)

JE 2021 11
1. 日本脳炎とは
2. 松永泰子,矢部貞雄,谷口清州,中山幹男,倉根一郎. 日本における近年の日本脳炎患者発生状況-厚生省伝染病流行予測調査および日本脳炎確認患者個人票(1982~1996)に基づく解析-. 感染症学雑誌. 1999. 73: 97-103.
3. Arai, S., Matsunaga, Y., Takasaki, T., Tanaka-Taya, K., Taniguchi, K., Okabe, N., Kurane, I., Vaccine Preventable Diseases Surveillance Program of Japan. Japanese encephalitis: surveillance and elimination effort in Japan from 1982 to 2004. Japanese Journal of Infectious Diseases. 2008. 61: 333-338. Pubmed
4. Konno, J., Endo, K., Agatsuma, H., Ishida, N., Cyclic outbreaks of Japanese encephalitis among pigs and humans. American Journal of epidemiology. 1966. 84: 292-300.Pubmed
5. 2015年夏に千葉県で発生した日本脳炎の乳児例. IASR Vol. 38 p.153-154: 2017年8月号. 
6. 厚生労働省. 日本脳炎. (2023年7月10日アクセス)
7. 国立感染症研究所 予防接種スケジュール

国立感染症研究所 感染症疫学センター/ウイルス第一部

厚生労働省
国立感染症研究所
(掲載日:2023年8月 9日)
(更新日:2023年 8月15日)

 

 【背景・目的】

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2023年4月時点において世界で6億人以上が感染し約600万人以上が死亡している公衆衛生上、極めて脅威の大きい感染症である。新型コロナウイルスに対する我が国の一般住民における抗体保有状況の継続的な検討は、今後のCOVID-19対策に重要である。2020年度、2021年度と厚生労働省および国立感染症研究所が主体となって大規模な血清疫学調査が実施された。本調査は、昨年度までの調査を引き継ぎ、我が国における新型コロナウイルス感染症の疾病負荷の把握と新型コロナワクチン接種で誘導された抗体の保有状況を検討することを目的として、昨年度までの調査と同様に5都府県をおいて実施された。国内の検査陽性者数は2023年4月30日時点において、3372万人が確認されているが実際の感染者数は把握されている数よりも高いことが推測され、信頼性の高い結果を得るために抗体検査の実施が求められている。そこで、2022年度は先般の調査に準拠し、被験者の年齢・性別、職業、ワクチン接種状況や新型コロナウイルス感染症の診断歴等を聴取するとともに抗体保有状況を調査した。本調査により、様々な属性の集団における既感染者割合を推定することが可能となり、今後の感染症対策にとって有用な知見が得られることが期待できる。本報告書では、2022年12月および2023年2月に実施された第5回・第6回の血清疫学調査の結果を示す。

  続きを読む:2022年度新型コロナウイルス感染症に対する血清疫学調査報告
 

国立感染症研究所 実地疫学研究センター
感染症疫学センター
2023年2月3日現在
(掲載日:2023年8月4日)

日本では1948年に性病予防法により報告されていた梅毒は、1999年4月から感染症法により5類感染症全数把握対象疾患に定められ、診断した医師は7日以内に管轄の保健所に届け出ることが義務づけられた。本まとめでは、診断週に基づいて梅毒報告の特徴を記載する。また報告率については人口10万人あたりの報告数とした。

梅毒報告数は男女ともに2011年頃から継続的に増加していたが、2018年をピークに減少した。しかし2021年には再度増加に転じ、7,978例(男性5,261例、女性2,717例)となった(図1図2図3)。2021年の報告は、病型別では早期顕症の報告数が男女とも特に増加していた。男性では特に局所症状を中心とした早期顕症Ⅰ期が最も多くかつ最も増加していた。女性では、全身症状を中心とした早期顕症Ⅱ期が最も多くかつ最も増加していた。先天梅毒の報告数も梅毒報告総数の増加とともに増加傾向にあったが2019年の23例をピークに横ばいとなり、2021年は20例であった。

掲載日:2023年8月4日

第124回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年8月4日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第124回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版(準備中)

感染状況や医療提供体制の状況等

  • 新規患者数は、4月上旬以降緩やかな増加傾向となっており、5類移行後も11週連続で増加が継続し、直近では全国の定点当たり報告数が15人を超えた。
     (全国の7/24~7/30の定点当たり15.91人、前週比1.14)
  • 地域別の新規患者数は、42都府県で前週より増加傾向にある。沖縄県では7月上旬以降、減少傾向がみられる。
     (沖縄県の7/24~7/30の定点当たり17.59人、前週比0.78)
  • 全国の年代別新規患者数は、10歳代を除きすべての年代で前週より増加傾向にある。
  • 変異株の発生動向について、XBB系統の割合が大部分を占めており、XBB.1.9系統は横ばい、XBB.1.16系統及びXBB.2.3系統は増加傾向、XBB.1.5系統は減少傾向となっている。
  • 新規入院者数や重症者数は、いずれも増加傾向だが、特に7月中旬以降、重症者数が増加している(直近のデータほど過小評価となっている点に留意が必要) 。
  • 医療提供体制の状況について、全国的なひっ迫はみられないが、在院者数は増加傾向にある。沖縄県では、在院者数は減少傾向にある。
  • 救急医療について、救急搬送困難事案数はコロナ疑い、非コロナ疑いともに増加が継続している傾向にある。
  • 夜間滞留人口について、5類移行後において、全国的に大きな増加はみられていない。

 

ブタの日本脳炎抗体保有状況 -2023年度速報-

(2023年8月2日現在)

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 日本脳炎は、日本を含め東南アジアを中心に広く常在した疾患で、日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus: JEV)に感染した者のうち100~1,000人に1人程度が発症すると推定される重篤な急性脳炎である [1]。感染経路は、主にイエカ属の蚊(日本では主にコガタアカイエカ)による吸血でJEVに感染したブタ等を刺咬・吸血したのちにヒトを吸血することで感染する。

  1960年代までは毎年夏から秋にかけて多数の日本脳炎患者が発生しており [2,3]、ブタの感染状況からJEVが蔓延している地域に多くの患者発生がみられた。1960年代の日本脳炎の患者が多数発生していた環境では、日本脳炎患者が検出される時期に先行してブタのJEVに対するHI抗体の上昇が確認されている [4]。1992年以降、日本脳炎患者の報告数は、2016年の11例、2019年の10例を除き全て一桁の報告でブタの感染状況と比較して患者発生数は低く、環境中のウイルス活動状況と必ずしも一致していない。しかし、ブタの抗体保有状況はウイルス陽性蚊の存在している地域を間接的に示唆するデータと推測され、少なくともこのような地域ではヒトへの感染リスクの存在する地域と考えられる。2015年には10か月齢の小児にも感染が確認され[5]、2022年は千葉県、広島県、熊本県から症例が報告されている。

 感染症流行予測調査事業では、全国各地のブタ血清中のJEVに対する抗体保有状況を赤血球凝集抑制法(Hemagglutination inhibition test: HI法)により測定し、JEVの蔓延状況およびウイルスの活動状況を調査している。前年の秋以降に生まれたブタがJEVに対する抗体を保有し、さらに2-メルカプトエタノール(2-ME)感受性抗体(IgM抗体)を保有している場合、そのブタは最近JEVに感染したと考えられる。下表は本年度の調査期間中におけるブタの抗体保有状況を都道府県別に示しており、JEVに最近感染したブタが認められた地域を青色、それに加えて調査したブタの50%以上に抗体保有が認められた地域を黄色、80%以上に抗体保有が認められた地域を赤色で示している。

 本速報はJEVの感染に対する注意を喚起するものである。それぞれの居住地域における日本脳炎に関する情報にも注意し、JEVが活動していると推測される地域においては、日本脳炎の予防接種を受けていない者、とくに乳幼児や高齢者は蚊に刺されないようにするなどの注意が必要である。

 なお、日本脳炎定期予防接種は、第1期(接種回数は初回2回、追加1回)については生後6か月から90か月に至るまでの間にある者、第2期(1回)については9歳以上13歳未満の者が接種の対象であるが、平成7年4月2日(1995年4月2日)から平成19年4月1日(2007年4月1日)までに生まれた者で積極的勧奨の差し控えなどにより接種機会を逃した者は、20歳になるまでの間、定期接種として合計4回の日本脳炎ワクチンの接種が可能である(詳細は厚生労働省ページを参照)。また、平成19年4月2日(2007年4月2日)~平成21年10月1日(2009年10月1日)までに生まれた者に対しても、生後6か月から90か月未満のみならず9歳以上13歳未満の間にも、第1期(3回)の不足分を定期接種として接種可能である。ただし、生後90か月(7歳半)以上9歳未満は定期接種として接種することができないので、注意が必要である。市区町村からの案内に沿って接種を受けていただくようお願いしたい[6,7]。

抗体保有状況
(月別推移)


抗体保有状況
(地図情報)

JE 2021 11
1. 日本脳炎とは
2. 松永泰子,矢部貞雄,谷口清州,中山幹男,倉根一郎. 日本における近年の日本脳炎患者発生状況-厚生省伝染病流行予測調査および日本脳炎確認患者個人票(1982~1996)に基づく解析-. 感染症学雑誌. 1999. 73: 97-103.
3. Arai, S., Matsunaga, Y., Takasaki, T., Tanaka-Taya, K., Taniguchi, K., Okabe, N., Kurane, I., Vaccine Preventable Diseases Surveillance Program of Japan. Japanese encephalitis: surveillance and elimination effort in Japan from 1982 to 2004. Japanese Journal of Infectious Diseases. 2008. 61: 333-338. Pubmed
4. Konno, J., Endo, K., Agatsuma, H., Ishida, N., Cyclic outbreaks of Japanese encephalitis among pigs and humans. American Journal of epidemiology. 1966. 84: 292-300.Pubmed
5. 2015年夏に千葉県で発生した日本脳炎の乳児例. IASR Vol. 38 p.153-154: 2017年8月号. 
6. 厚生労働省. 日本脳炎. (2023年7月10日アクセス)
7. 国立感染症研究所 予防接種スケジュール

国立感染症研究所 感染症疫学センター/ウイルス第一部

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan