Identification of IMP Dehydrogenase as a Potential Target for Anti-Mpox Virus Agents

Hishiki T#, Morita T#, Akazawa D$, Ohashi H$, Park ES, Kataoka M, Mifune J, Shionoya K, Tsuchimoto K, Ojima S, Azam AH, Nakajima S, Kawahara M, Yoshikawa T, Shimojima M, Kiga K, Maeda K, Suzuki T, Ebihara H, Takahashi Y, Watashi K (#$equally contributed)

Microbiology Spectrum (in press)
doi: 10.1128/spectrum.00566-23.

エムポックスウイルス(MPXV)感染細胞実験でのスクリーニングから、Gemcitabine、Trifluridine、Mycophenolic acidなどの化合物が抗MPXV活性を有することが明らかとなった。Mycophenolic acidが阻害するのはMPXVの細胞侵入後の過程であり、その標的分子の一つであるIMP dehydrogenase(IMPDH)およびこれが制御するプリン生合成経路がMPXV複製に必要であることを見出した。IMPDHを阻害する化合物はいずれも抗MPXV活性を示し、その中にはMycophenolic acidよりも明らかに強い抗ウイルス活性をもつものが見出されたことより、今後IMPDHは抗MPXV薬開発の有効な創薬標的となる可能性が示唆された。

Monitoring Enteroviruses and SARS-CoV-2 in Wastewater Using the Polio Environmental Surveillance System in Japan

Kazuhiro Kitakawa , Kouichi Kitamura , Hiromu Yoshida

Applied and Environmental Microbiology, 89, e01853-22, 2023
https://doi.org/10.1128/aem.01853-22

世界ポリオ根絶計画の一環として、下水等からウイルスを検出するポリオ環境水サーベイランスが国内外で実施されています。ポリオが根絶されている日本ではポリオウイルス以外のエンテロウイルスが毎年検出されてきました。このサーベイランスシステムを活用し下水中新型コロナウイルスRNAの検出も行った結果、(1) COVID-19パンデミック後のエンテロウイルス関連疾患の減少と同時期に下水中エンテロウイルスの検出頻度も大きく減少し、(2) 下水中新型コロナウイルスRNA量と地域のCOVID-19新規陽性者数との間に相関が見られ、既存のポリオ環境水サーベイランスシステムが下水中エンテロウイルス及び新型コロナウイルスの監視に活用しうることが示されました。

本研究は、厚労省科研費、AMEDの研究支援を受け実施しました。

Establishment of Vero cell lines persistently harboring a yellow fever virus 17D subgenomic replicon

Kyoko Saito, Kentaro Shimasaki, Masayoshi Fukasawa, Ryosuke Suzuki, Yuko Okemoto-Nakamura, Kaoru Katoh, Tomohiko Takasaki, Kentaro Hanada

Virus Research Volume 322, December 2022, 198935.
https://doi.org/10.1016/j.virusres.2022.198935

黄熱は、黄熱ウイルス(YFV)が引き起こす蚊媒介性感染症で、有効なワクチンがありますが、特異的な治療薬はありません。私達は、YFV(17D株)のゲノムRNA上の構造遺伝子を蛍光タンパク質の遺伝子に置換したレプリコンを作製してサル腎由来Vero 細胞に導入し、レプリコンが持続的に複製される‘レプリコン細胞’を樹立しました。この細胞では、蛍光強度でレプリコン複製の度合を知ることが可能で、実際に、YFV増殖を阻害する薬剤によって、レプリコン細胞の蛍光が低下することが確認されました。また、レプリコン細胞とYFV感染細胞における複製タンパク質および複製中間体・二本鎖RNAの分布は類似していました。以上の結果は、レプリコン複製が感染細胞のゲノム複製を模倣していることを示しており、レプリコン細胞は抗YFV薬や宿主因子の探索に有用であると考えられました。

本研究はJSPS、AMED等の支援を受け、感染研・産総研・神奈川衛研が行いました。

Macrophage depletion reactivates fecal virus shedding following resolution of acute hepatitis A in Ifnar1-/- mice

Shiota T, Matsuda M, Zheng X, Nagata N, Ishii K, Suzuki R, Muramatsu M, Takimoto K, Hanaki K, Lemon SM, McGivern DR, Hirai-Yuki A

J Virol. 2022 Nov 10 https://journals.asm.org/doi/10.1128/jvi.01496-22

A型肝炎は世界で年間140万人の患者が発生し、2016年には7千人が死亡した重大な疾病です。典型的な急性ウイルス性肝炎で、多くは一過性で終りますが、一部の患者で糞便中へのウイルス排出の再開を伴う再燃が報告されています。肝臓からのA型肝炎ウイルス(HAV)排除機構はわかっていません。国立感染症研究所とノースカロライナ大学の共同研究で、HAV感染マウスでは肝炎と糞便中へのウイルス排出の終息後も肝臓ではウイルスRNAが長期間複製し続け、この時期のウイルスの制御にはマクロファージが必須であることが明らかになりました。この新しい知見は肝炎ウイルスが肝臓から最終的に排除される仕組みの解明に貢献するものです。

本研究は、日本医療研究開発機構、米国国立衛生研究所、日米医学協力計画の支援を受けて実施されました。

Essential domains of oxysterol-binding protein required for poliovirus replication

Minetaro Arita

Viruses, 2022, 14:2672, https://doi.org/10.3390/v14122672

宿主細胞のタンパク質OSBPは、コレステロールを小胞体からウイルス複製膜に輸送することでウイルスの複製を促進していると考えられています。しかし、その機能には不明な点が多く、必要とされる領域も同定されていません。今回、最近開発された新規OSBP活性解析法(Kobayashi J et al., ACS Infect Dis, 2022)を用いて、ポリオウイルスの複製に必要とされるOSBPの領域を解析しました。結果、リガンド結合領域とリン脂質に結合する領域は予想通りウイルスの複製に必要でしたが、驚いたことに小胞体への結合に必要な領域(FFATモチーフ)は必要ではありませんでした。今回得られた知見は、OSBPのウイルス感染細胞における脂質の輸送方法の解明につながることが期待されます。

Membrane sphingomyelin in host cells is essential for nucleocapsid penetration into the cytoplasm after hemifusion during rubella virus entry

Yoshio Mori, Masafumi Sakata, Shota Sakai, Toru Okamoto, Yuichiro Nakatsu, Shuhei Taguwa, Noriyuki Otsuki, Yusuke Maeda, Kentaro Hanada, Yoshiharu Matsuura, Makoto Takeda

mBio, 8 Nov, 2022(URL: https://doi.org/10.1128/mbio.01698-22

国立感染症研究所(ウイルス第三部、細胞化学部、品質保証・管理部)と大阪大学微生物病研究所の共同研究により、風疹ウイルスの細胞侵入において宿主細胞のスフィンゴミエリン合成酵素(SMS)の酵素活性が決定的な役割を果たすことが明らかになりました。SMSが欠損した細胞では、風疹ウイルスのエンベロープ膜と宿主のエンドソーム膜の融合がヘミフュージョンの段階で停止し、ウイルスゲノムの細胞質への放出が著しく抑制されることが示されました。このことはウイルス感染における宿主膜の脂質構成の役割について新たな知見を与えるものです。

本研究は、日本医療研究開発機構、文部科学省、日本学術振興会、大阪大学微生物病研究所の支援を受けて実施されました。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan