複数国で報告されているエムポックスについて
(第2報)

2022年7月12日時点
2023年5月26日一部改訂

国立感染症研究所

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概要

  • 2022年5月以降、欧米を中心に、これまでエムポックスの流行が報告されてきたアフリカ大陸の国々(以下、常在国)への渡航歴のないエムポックス症例が6,000例以上報告されており、常在国外では前例のない流行となっている。世界的にエムポックスに対するサーベイランス体制が十分整っていないことから、水面下で感染が広がっている可能性があり、今後も感染者の報告が続く可能性がある。
  • 今回の流行で報告されている症例の多くは男性であり、男性間で性交渉を行う者(MSM; Men who have sex with men) が多く含まれていることが各国から報告されている。
  • エムポックスはヒトからヒトに容易に伝播するものではない。感染者の皮膚病変や近接した対面での呼吸器飛沫への一定時間以上の曝露(prolonged face-to-face contact in close proximity)、感染者が使用した寝具等の媒介物(fomite)により伝播する。現時点の一連の報告では、感染者にみられた病変の部位などから性的接触に伴う伝播があった可能性が指摘されている。
  • エムポックスは多くは自然軽快するが、小児や妊婦、免疫不全者で重症となる場合がある。2022年5月以降では、従来の常在国であるナイジェリアと中央アフリカ共和国で死亡例が3例報告されたが、常在国外での死亡例は報告されていない。
  • 7月12日現在、日本国内においてエムポックスの報告はない。ただし、今後国内でも感染者が出る可能性はあり、検査・診断を含めた対応について整備が進められている。
  • エムポックスに類似する発疹等の症状がある場合は速やかに医療機関に相談することが望ましい。特に次のような者では、皮疹の出現を含む体調に注意を払うことが望ましい。
     ➢サル等の患者または疑い例の者との接触のあった者
     ➢複数または不特定多数との性的接触があった者
    なお、常在国外で報告されている症例については、これまでに知られているエムポックスの症状の特徴とは異なる所見があることが報告されており、注意が必要である。
  • 諸外国では症例の探索、感染経路の調査が行われている。我が国では諸外国での知見を注視していくとともに、国内サーベイランスの強化させていく。患者発生時には積極的疫学調査により実態を速やかに明らかにする必要がある。また、適切に対応すれば感染拡大の封じ込めが可能な疾患であるので、注意喚起、早期の患者発見と対応が重要である。
  • 特定の集団や感染者、感染の疑いのある者等に対する差別や偏見は、人権の侵害につながるため、客観的な情報に基づき、先入観を排した判断と行動がなされるべきである。

 

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