国立感染症研究所


麻しんに関する緊急情報

2016年8月25日
国立感染症研究所感染症疫学センター

全国各地で麻しんの患者報告が相次いでいます。今年は特にアジアの国々(インドネシア、モンゴル等)に渡航歴のある患者の届出報告が目立ちます。
(麻疹ウイルス遺伝子型別内訳:http://www.niid.go.jp/niid/images/iasr/rapid/meas/genotype/mv2016_20160808.pdf)

麻しんが流行している国(下記URL参照)に渡航する前には、必ず麻しん含有ワクチンの接種歴を確認し、未接種未罹患の場合は、接種後に渡航をご予定くださいますようお願い申し上げます。 http://www.who.int/immunization/monitoring_surveillance/burden/vpd/surveillance_type/active/measles_monthlydata/en/
http://www.wpro.who.int/immunization/documents/measles_rubella_bulletin/en/

また、定期接種対象者(http://www.niid.go.jp/niid/ja/vaccine-j/2525-v-schedule.html)で、まだワクチンを受けていない場合や、受けそびれていた場合は、できるだけ早めの接種をご検討ください。

麻しんの初期症状は、発熱とカタル症状(咳、鼻水、眼球結膜の充血等)です。これらが数日続いた後、口腔内に麻しんに特徴的とされる白い粘膜疹(コプリック斑)が現れます。コプリック斑が出現すると、一旦体温は下がったかのように見えますが、すぐに高熱となり、体に赤い発疹が出始めて、全身に広がります。肺炎、中耳炎等を合併することが多く、麻しん患者1,000人に一人は脳炎を合併し、命に関わります。空気感染、飛沫感染、接触感染で感染伝播し、基本再生産数(感受性者の集団で、一人の患者が平均何人の人に感染させるかを表す数字)は12~18と極めて高く、どんなに広い場所(例:コンサート会場や体育館等)であっても、免疫がなければ同じ空間にいるだけで感染し発症する危険性が高くなります。

麻しんウイルスに感染後、約10-12日の潜伏期間を経て発症してきますので、麻しん含有ワクチンの接種歴がなく、発熱、咳、鼻水、眼球結膜の充血等のカタル症状を認めた場合は、約10~12日前の行動を思い出し、特に、海外や人が多く集まる場所に行っていた等がある場合は、麻しんを疑って、事前に医療機関に電話連絡してから受診していただけるようにご連絡いただくことも感染拡大を予防するためには大切です。

医療機関の皆様、特に、麻しん患者が最初に受診する可能性のある医療機関(内科、小児科、皮膚科、救急等)の皆様におかれましては、必ず麻しんを鑑別に入れて、早期診断ならびに感染拡大予防策を講じてくださいますようお願い申し上げます。

医療機関では、問診項目の中に、麻しん含有ワクチンの接種歴、最近の渡航歴、最近の国内旅行歴、最近国際空港や人が多く集まる場所に行ったことがないか、を含めていただくことで、早期診断に繋がります。

麻しんと臨床診断した場合は、直ちに最寄りの保健所に「麻しん発生届」の提出をお願い申し上げます。

感染症発生動向調査週報「IDWR」2016年26号では、「注目すべき感染症」として麻しん・風しんを取り上げています。下記のリンクからIDWR 2016年26号のPDFファイルをダウンロードし、「注目すべき感染症」(P.7-8)をご覧ください。
IDWR2016年26号PDF:https://www0.niid.go.jp/niid/idsc/idwr/IDWR2016/idwr2016-26.pdf

また、国立感染症研究所では、下記のURLで、医療機関での麻疹対応ガイドライン、麻疹発生時対応ガイドライン、都道府県における麻しん風しん対策会議等に関するガイドライン、学校における麻しん対策ガイドライン、医師による麻しん届出ガイドラインを掲載していますので、どうかご参照ください。
http://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ma/measles/221-infectious-diseases/disease-based/ma/measles/555-measles-guidlines.html

最新の麻しんの患者数、麻しんウイルス検出数、予防接種率等の情報は、「麻しん」のサイト(http://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ma/measles.html)をご参照ください。

 

以上、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

 

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