国立感染症研究所

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喘息症状を呈する患者からのエンテロウイルス68型(EV-D68)の検出―広島市

(掲載日 2015/10/29) (IASR Vol. 36 p. 249-250: 2015年12月号

2015年9月以降、広島市内の病原体定点医療機関から気管支喘息、喘息発作、喘息性気管支炎等の診断名で、喘息症状(喘息様症状を含む)を呈する患者の検体についての検査依頼が極端に増加した(図1)。同時に、医療機関から今シーズンは重症の喘息症状患者が多く発生しているとの情報提供もあった。

当所では、呼吸器症状を呈する患者の咽頭ぬぐい液、鼻汁等の検体について、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルス1、2、3型、ヒトボカウイルス、ライノウイルス、エンテロウイルスなどを対象に、リアルタイムPCR検査を実施している。特に、9月以降、喘息症状を呈する患者からは、ライノウイルスおよびエンテロウイルス双方を検出できるリアルタイムPCR系において、陽性検体が多数認められ、さらに、両者を鑑別するコンベンショナルPCR1)において、多くの検体でエンテロウイルスが陽性となった。これらの検体については、さらにCODEHOP PCR法2)によりVP1領域を増幅し、遺伝子型を調べた結果、EV-D68が多数検出された。2015年8~9月までの期間に、検査を実施した37人の喘息症状患者から検出されたウイルスの内訳を図2に示す。37人中16人(43%)からEV-D68、12人(32%)からライノウイルスが検出された。

同領域の系統樹解析の結果(図3)、9月以降に本市で検出されたEV-D68はすべて、2014年に米国での重症呼吸器疾患の大流行3)の原因となったEV-D68と近縁のlineage2に属していた。なお、本市では2013年にも3株のEV-D68が検出されているが、これらはlineage3に属する株であり、本年9月以降の流行株とは異なっていた。

広島県およびさいたま市において、EV-D68の関与が疑われるポリオ様弛緩性麻痺の症例が報告されている4,5)が、現在のところ、当市においてはポリオ様弛緩性麻痺患者が発生したという報告はない。

10月中旬に入ってからも、多数の喘息症状を呈する患者の検体について検査依頼があり、引き続き、重症の喘息症状を引き起こす病原体としてのEV-D68の動向に注視するとともに、EV-D68によるポリオ様弛緩性麻痺の発症との関連性についても注目したい。

 
参考文献
  1. Ishiko H, et al., J Infect Dis 185: 744-754, 2002
  2. Nix WA et al., J Clin Microbiol 44(8): 2698-2704, 2006
  3. CDC, Enterovirus D68  
    http://www.cdc.gov/non-polio-enterovirus/about/ev-d68.html
  4. 島津幸枝、他, IASR 35: 295-296, 2014
  5. 豊福悦史、他, IASR 36: 226-227, 2015 
    http://www.nih.go.jp/niid/ja/entero/entero-iasrs/6004-pr4286.html
 
広島市衛生研究所生物科学部
  藤井慶樹 則常浩太 八島加八 山本美和子 石村勝之
 

 

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