国立感染症研究所

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<速報>重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスの国内分布調査結果(第二報)

(掲載日 2014/2/25)

 

マダニ媒介性の重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、2013年1月に国内の患者が初めて確認された新興ウイルス感染症である。これまでに患者の発生した自治体は、九州・四国・中国・近畿地方の13県(兵庫、島根、岡山、広島、山口、徳島、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、宮崎及び鹿児島県)である。

SFTSウイルス(SFTSV)が分布する地域では、マダニとマダニに吸血される動物との間でSFTSVが循環・保持される仕組みが成立している。ヒトはSFTSVを保有するマダニに咬まれることで感染する。動物はSFTSVに感染しても発症しないが、感染すると抗体ができる。日本国内には、47種のマダニが生息する。SFTSVの国内分布状況を把握し、その自然界での生活環を明らかにすることは、 SFTS患者発生のリスクを評価し、効果的な感染予防対策を立てる上で非常に重要である。

2013年5月から開始された厚生労働科学研究「SFTSの制圧に向けた総合的研究(研究代表者 倉田 毅)」において、マダニからのSFTSV遺伝子検出法および動物のSFTSV抗体測定法が開発された。これらの検査法により、既に患者が発生している地域だけでなく、患者の発生のない地域も含めて、これまでに入手できたマダニや動物血清の検体を用いて調査を実施したところ、以下のことが明らかになった。

1)マダニについて:九州から北海道の26自治体において、植生マダニ(植物に付着し、動物やヒトを待ち構えているマダニ)とシカに付着しているマダニ(18種4,000匹以上)を調査したところ、複数のマダニ種(タカサゴキララマダニ、フタトゲチマダニ、キチマダニ、オオトゲチマダニ、ヒゲナガチマダニ等)から、SFTSV遺伝子が検出されたが、保有率は5~15%程度とマダニの種類により違いがあった。また、これらのSFTSV保有マダニは、既に患者が確認されている地域(宮崎、鹿児島、徳島、愛媛、高知、岡山、島根、山口、兵庫県)だけではなく、患者が報告されていない地域(三重、滋賀、京都、和歌山、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、栃木、群馬、岩手、宮城県、北海道)においても確認された。調査できたマダニ数が数匹と少なかったため、現時点では判断できなかった3自治体(福岡、熊本、福島県)を除くと、調査した全ての自治体でSFTSV遺伝子を持つマダニがみつかったことから、SFTSV保有マダニは調査していない自治体を含めて国内に広く分布していると考えられる。

2)動物のSFTSV抗体保有状況について:保存血清等を用いて調査した前回の調査[SFTSウイルスの国内分布調査結果(第一報)http://www.nih.go.jp/niid/ja/sfts/sfts-iasrs/3864-pr4043.html]に加えて、平成25年度にシカ(16自治体)、イヌ(2自治体)のSFTSV抗体調査を行った。その結果、シカでは、前回の調査と併せて検体が得られた地域(27自治体)のうち、17自治体(福岡、熊本、宮崎、鹿児島、島根、広島、山口、徳島、愛媛、三重、滋賀、京都、兵庫、和歌山、長野、静岡、宮城県)でSFTSV抗体陽性のシカが確認されたが、その他の10自治体(大分、高知、岐阜、山梨、栃木、群馬、千葉、岩手、福島県、北海道;ただし大分、高知、千葉、福島県は、それぞれ3、1、5、4頭しか調査されていない)では陽性のシカは今回の調査ではみつからなかった。また、シカにおける抗体陽性率は、0%(抗体陽性動物みつからず)から最大で90%と地域差が大きく(陽性シカがみつかった地域での平均は31%)、特にSFTS患者発生地域およびその近隣地域で抗体陽性率が高い傾向がみられた。イヌでは、検体が得られた地域(19自治体)のうち、九州(熊本、宮崎、鹿児島県)、四国(徳島、香川、愛媛、高知県)以外に、患者が報告されていない自治体(三重、富山、岐阜県)でも抗体保有動物が存在した。一方、9自治体(沖縄、長崎、広島、滋賀、愛知、静岡、長野、新潟県、北海道)では陽性のイヌはみつからなかった。

本病の発生が先に報告された中国では、SFTSVの主な媒介マダニはフタトゲチマダニとされ、また、ヤギ、ヒツジ、ウシ、イヌ等の動物がSFTSVの抗体を高率に保有していることから、フタトゲチマダニとこれらの動物との間でSFTSVの生活環ができていると考えられている。一方、日本では、少なくともフタトゲチマダニとタカサゴキララマダニがSFTSVを媒介すると考えられている。今回の調査結果から、これら2種のマダニ以外にもSFTSVを保有するマダニ(特にチマダニ属)が複数種存在することが分かった。今回の調査は、前回の調査[SFTSウイルスの国内分布調査結果(第一報)http://www.nih.go.jp/niid/ja/sfts/sfts-iasrs/3864-pr4043.html]をさらに拡大して実施されたものであり、より多くの地域を対象とした。未だ、マダニ、動物とも全国を網羅的に調査されてはいないが、SFTSV保有マダニは調査していない自治体を含めて国内に広く分布していると考えられる。

今後、研究班としては、各自治体や関係者の協力を得ながら、対象地域や検体採取地点、動物の種類・頭数を広げて調査を実施することにより、マダニと動物におけるSFTSVの生活環をより詳細に解明したい。

なお、今回の調査にあたって御協力をいただいた、大日本猟友会ならびに徳島県他多くの自治体関係者の皆様に深謝申し上げます。

 

国立感染症研究所 獣医科学部  
  森川 茂 宇田晶彦 木村昌伸 藤田 修 加来義浩 今岡浩一
同 昆虫医科学部 澤辺京子
同 細菌第一部 川端寛樹
同 ウイルス第一部 安藤秀二 西條政幸
山口大学共同獣医学部 前田 健 高野 愛
岐阜大学応用生物科学部 柳井徳磨
馬原アカリ医学研究所 藤田博己
福井大学医学部 高田伸弘
厚生労働省結核感染症課 中嶋建介 福島和子

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