平成30年2月19日更新

 

<オクルディン分子の発現が欠損したヒト肝由来細胞ではC型肝炎ウイルスの感染が見られなくなる>

 

Shirasago Y, Shimizu Y, Tanida I, Suzuki T, Suzuki R, Sugiyama K, Wakita T, Hanada K, Yagi K, Kondoh M, Fukasawa M.

“Occludin-Knockout Human Hepatic Huh7.5.1-8-Derived Cells Are Completely Resistant to Hepatitis C Virus Infection.”

Biol. Pharm. Bull. 2016; 39(5):839-48.

doi: 10.1248/bpb.b15-01023.

 

細胞接着に関与する細胞膜タンパク質オクルディン(Occludin)は、C型肝炎ウイルス(HCV)の細胞への侵入過程に関わる宿主細胞因子の一つとして知られています。しかし、肝細胞でのHCV感染にオクルディン分子が必須であるかは、最終的な結論が出ていませんでした。そこで私たちは、ヒト肝がん由来株化細胞Huh7.5.1-8からゲノム編集技術(CRISPR/Cas9システム)を用いてオクルディン遺伝子を破壊したオクルディン欠失細胞(OKH-4株と命名)を樹立し、検討を行いました。HCVの感染様式には、培地からウイルスが感染するCell-free(セルフリー)感染だけでなく、細胞間でウイルスが移行するCell-to-cell(細胞-細胞間)感染も知られています。OKH-4細胞を用いた検討から、オクルディンはセルフリー感染だけでなく細胞-細胞間感染にも必須であることが明らかとなりました。以上の結果から、オクルディン分子は感染及び感染の拡大を防御する創薬標的候補となるとと私たちは考えています。また、本研究で樹立したオクルディン欠失細胞株はHCV感染症の研究だけでなくオクルディン分子自体の宿主細胞における機能解析にも有用なツールになると期待されます。

 本研究は、国立感染症研究所細胞化学部・ウイルス第二部、大阪大学、浜松医科大学、慶應義塾大学との共同研究の成果です。研究費は、文部科学省科研費、日本医療研究開発機構(AMED)肝炎等克服実用化研究事業の支援を受けて行われました。本成果は、発表雑誌のHighlighted paper selected by Editor-in-Chiefに選ばれ、掲載号の表紙でも紹介されました。

  

 

 

 

 

 

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