平成25年5月22日更新
Q1-1 | RT-PCRを行うにあたって検体はどのように処理すれば良いでしょうか? |
RT-PCRにおける検体の前処理としてRNAの精製が必要です。参考までにQIAGEN社のQIAamp Viral RNA Mini Kitを用いたRNAの精製方法を示しました。 |
Q1-2 | RT-PCRに迅速診断キットに使用した残りの液は使えますか? |
迅速診断キットの抽出液中のウイルスRNAは非常に不安定であるため、RT-PCR検査用の検体には適しておりません。 |
Q1-3 | どのような検体を使用すればよいですか? |
一般的には患者から滅菌スワブを用いて鼻腔ぬぐい液もしくは鼻腔吸引液、咽頭拭い液等の検体を採取しインフルエンザの検査に用いますが、現在ウイルス増殖部位に関する明確なエビデンスが得られていませんので、上気道からの検体採取に加えて、喀痰あるいは気管支吸引液、気管支肺胞洗浄液(BAL)等、下気道からの検体採取に努めることが、感度の高い検査診断を実施するために重要です。なお、検体採取部位に関する詳細な情報につきましてはhttp://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/a/flua-h7n9/3395-n7n9top.htmlをご参照下さい。 |
Q2-1 | プローブはどこで入手できますか? |
本マニュアルではTaqMan MGB プローブを利用した検出法を示しました。TaqMan MGB プローブはLife Technology社で合成可能です(参考 http://www.appliedbiosystems.jp/website/jp/product/modelpage.jsp?MODELCD=19811)。 |
Q2-2 | リアルタイムRT-PCR又は Conventional RT-PCRで示された以外の反応試薬やキットを使用できますか? |
参考までに本マニュアルではQIAGEN 社のQuantiTectProbe RT-PCR kit(リアルタイムRT-PCR用)、QIAGEN 社のOneStep RT-PCR kit(Conventional RT-PCR用)を利用した方法を示しました。他の反応試薬やキットを使用する場合は、製品に添付のマニュアルをご参照の上ご利用下さい。 |
Q2-3 | QIAGEN 社のQIAamp Viral RNA Mini Kit以外の方法でRNAを精製できますか? |
参考までにQIAGEN 社のQIAamp Viral RNA Mini Kitを用いたRNAの精製方法を示しました。他の抽出試薬で精製する場合は、製品に添付のマニュアルをご参照の上ご利用下さい。 |
Q2-4 | エチジウムブロマイドを使用したくないので他の染色試薬を使えますか? |
本方法では参考までにエチジウムブロマイドを用いた染色方法を示しました。他の染色試薬を使用する場合は、製品に添付のマニュアルをご参照の上ご利用下さい。 |
Q3-1 | リアルタイムRT-PCRに使用しているApplied Biosystems社 7500Fast Real time PCR system、Roche社LightCycler 480II、Conventional RT-PCRに使用しているApplied Biosystems社 GeneAmp PCR System 9700以外の機器を使用できますか? |
本方法は上記の機器を用いて最適化を行っておます。他の機器を使用する場合は、製品に添付のマニュアルをご参照の上ご利用下さい。 |
インフルエンザ・肺炎死亡における超過死亡について
インフルエンザの流行は社会に大きな影響を及ぼすが、外来受診者数や、インフルエンザあるいは肺炎を死因とする死亡数、医療費など、しばしば取り上げられる統計指標をそのまま「社会へのインパクト」とするには、それぞれに欠点がある。まず、インパクトは、実際の患者数の多さ、その重症度、毎日の生活への支障、個人的・社会的経済的損失、医療費、精神的な影響などのすべてを包括的に検討して求めるべきであるが、インフルエンザの医療機関を受診しなかった患者を含めた総患者数を把握することは事実上困難である。重症度は、病原体、環境、患者側などの複数の要因で決定されるため、死亡数は罹患者数と単純には比例しない。健康への影響や医療費の場合、軽快した場合と死亡した場合で大きく異なり、経過別の患者数の把握が必要となる上、総額、個人負担問わず、医療費情報そのものが調査されていない。従って、現存する患者数から「社会へのインパクト」を示すことはできない。また、疾病による最も重大な結果である死亡だけに焦点を絞って考えた場合も、原死因をインフルエンザとすると、インフルエンザから二次性の細菌性肺炎を続発して死亡に至った事例は含まれなくなり、死亡統計上の「インフルエンザによる死亡数」は、インフルエンザの影響を表現する上で適切ではない。一方、原死因を肺炎とすると、インフルエンザとはまったく関係のない病原体による肺炎死亡も含むこととなる。このように、インパクトを測る上で、単一の最適な指標が無いのが実情である。
これらの諸問題を是正するために世界保健機関(WHO)は、「超過死亡(excess death, excess mortality)」という概念を提唱している1)。超過死亡とは、インフルエンザが流行したことによって、インフルエンザ・肺炎死亡がどの程度増加したかを示す、推定値である。この値は、直接および間接に、インフルエンザの流行によって生じた死亡であり、仮にインフルエンザワクチンの有効率が100%であるなら、ワクチン接種によって回避できたであろう死亡数を意味する。この、インフルエンザの流行によってもたらされた死亡の不測の増加を、インフルエンザの「社会的インパクト」の指標とする手法について多くの研究がなされ、現在の国際的なインフルエンザ研究のひとつの流れとなっている。
本邦では、国立感染症研究所感染症情報センターが1998/99シーズンより、インフルエンザの流行規模の指標として超過死亡の評価を導入し、「感染研モデル」を公表している2)。このモデルはstochastic frontier estimation3)(非流行時の場合に発生すると考えられる死亡であるベースラインと、実際の死亡の乖離の幅を確率変数として定義して推定する方法)に基づき、日本の現状に合わせて作成された。超過死亡は、予測死亡数の閾値(95%信頼区間の上限値)と、実際報告された死亡数の差として求められる。
参考資料
[1] Assad F., Cockburn W. C., Sundaresan T. K. Use of excess mortality from respiratory diseases in the study of influenza. Bull WHO 1973; 49: 219-233.
[2] 大日康史, 重松美加, 谷口清州, 岡部信彦. インフルエンザ超過死亡「感染研モデル」2002/03シーズン報告. Infectious Agents Surveillance Report 2003; 24(11): 288-289.
[3] Rosko,M.D. Cost Efficiency of US Hosipitals: A Stochastic Frontier Approach. Health Economics 2001; 539-551.
[4] 大日康史. 健康経済学. 東洋経済新報社 2003, 86-91.
2014年6月9日更新
2012年9月22日に英国よりWHOに対し、中東へ渡航歴のある重症肺炎患者から後にMiddle East Respiratory Syndrome Coronavirus(MERSコロナウイルス)と命名される新種のコロナウイルス(以下、MERS-CoV)が分離されたとの報告があって以来、中東地域に居住または渡航歴のある者、あるいはMERS患者との接触歴のある者において、このウイルスによる中東呼吸器症候群(MERS)の症例が継続的に報告され、医療施設や家族内等において限定的なヒト-ヒト感染が確認されている。
(国立感染症研究所 ウイルス第三部・感染症疫学センター)
2013年7月3日 | Revised interim case definition for reporting to WHO – Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)(英文) |
2013年5月18日 | 新種のコロナウイルス感染症に関する暫定的サーベイランスの推奨(WHO)(訳:FORTH) |
現在国内では発生はありません。
2015年06月05日 | 中東呼吸器症候群(MERS)に関するQ&A(厚生労働省) | |
2013年05月23日 | WHOによる「よくあるご質問」(訳:IDSC) |
2019年10月29日 | 中東呼吸器症候群(MERS)のリスクアセスメント(更新8, 2019年10月29日現在) | |
2017年07月07日 | 中東呼吸器症候群(MERS)に対する積極的疫学調査実施要領(2017年7月7日版) | |
2017年06月16日 | 中東呼吸器症候群(MERS)のリスクアセスメント(更新7, 2017年6月16日現在) | |
2015年12月22日 | IASR 36(12), 2015【特集】中東呼吸器症候群(MERS), 2015年11月現在) | |
2015年07月17日 | 中東呼吸器症候群(MERS)のリスクアセスメント(更新6, 2015年7月17日現在) | |
2015年07月13日 | 中東呼吸器症候群(MERS)に対する積極的疫学調査実施要領(2015年7月10日版) | |
2015年06月10日 | 中東呼吸器症候群(MERS)に対する積極的疫学調査 調査票ダウンロード(2015年6月10日版) |
|
2015年06月04日 | 中東呼吸器症候群(MERS)のリスクアセスメント(更新5, 2015年6月4日現在) | |
2014年08月01日 | 中東呼吸器症候群(MERS)に対する積極的疫学調査実施要領(2015年7月30日版) | |
2014年07月25日 | 中東呼吸器症候群(MERS)・鳥インフルエンザ(H7N9)患者搬送における感染対策 | |
2014年07月25日 | 中東呼吸器症候群(MERS)・鳥インフルエンザ(H7N9)に対する院内感染対策 | |
2014年06月09日 | 中東呼吸器症候群(MERS)のリスクアセスメント(更新4, 2014年6月9日現在) | |
2014年05月26日 | 中東呼吸器症候群(MERS)のリスクアセスメント(更新3, 2014年5月26日現在) | |
2014年05月23日 | IDWR 2014年第19号【注目すべき感染症】 海外の注目すべき感染症 | |
2013年11月05日 | MERSコロナウイルスによる感染事例に関するリスクアセスメントと対応(更新2, 2013年11月05日現在) | |
2013年07月29日 | MERSコロナウイルスによる感染事例に関するリスクアセスメントと対応(更新1, 2013年07月29日現在) | |
2013年06月12日 | MERSコロナウイルスによる感染事例に関するリスクアセスメントと対応 |
2013年5月25日 | 新型コロナウイルス(nCoV)の概要と文献に関する更新(2013年5月17日更新)(訳:IDSC) |
2012年12月03日 | 新種のコロナウイルス感染症について(更新4)(WHO) |
2012年11月30日 | 新種のコロナウイルス感染症に関する暫定的サーベイランスの推奨(WHO) |
2012年11月26日 | 新種のコロナウイルス感染症について(更新3)(WHO) |
2012年10月11日 | 新種のコロナウイルス感染症について(更新2)(WHO) |
2012年10月01日 | 新種のコロナウイルス感染症と症例定義について(更新1)(WHO) |
2012年09月29日 | 暫定的症例定義の更新-新種のコロナウイルス(WHO) |
2012年09月25日 | 英国で確認された新たなコロナウイルス感染症について(WHO) |
2012年09月23日 | 新たなコロナウイルスについて 2012年9月(HPA) |