国立感染症研究所 実地疫学研究センター
感染症疫学センター
2024年4月19日現在
(掲載日:2024年4月24日)

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus: MRSA)感染症は、1999年4月に施行された感染症法では四類定点把握対象疾患に、また、2003年11月の感染症法の改正では五類定点把握対象疾患となり、現在、全国約500の基幹定点医療機関(都道府県が指定した病床数300以上の内科又は外科を標榜する病院)において医師がMRSA感染症と診断した場合、月単位で届出ることが義務付けられている。

MRSA感染症の届出対象は症状や所見からMRSA感染症が疑われ、届出基準に規定された検査材料、検査によりMRSA感染症と診断された患者であり、臨床症状を示さず、MRSAを保菌しているだけの者は届出の対象外となっている(届出基準、届出票についてはhttps://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-41-01.html 参照)。なお、感染症法に基づく届出の基準として示されたMRSAの判定基準値は、病院で用いられている判定基準値と異なることがある(文末参考)。

2022年に報告されたMRSA感染症は14,694例であり、定点当たり報告数は30.7であった(図1)。MRSA感染症の報告数は、2011年以降、概ね減少傾向であるが、2016年以降の減少の程度は小さくなり、2022年の報告数は2020年、2021年とほぼ同等であった。2022年は435カ所の基幹定点医療機関がMRSA感染症を報告した。これは2022年に五類定点把握対象疾患を報告した基幹定点医療機関の月当たり平均数、479の約91%に相当した。報告した医療機関は47都道府県すべてに分布していた。1例以上のMRSA感染症を報告した基幹定点医療機関における、医療機関あたりMRSA感染症の報告数は、中央値24、最小値1、最大値266であった。

2022年に報告された患者の性別は男性が9,164例(62%)と女性より多く、診断時年齢は70歳以上が10,124例(69%)であった(図2)。性別の分布は、2011年から2022年まで、同様の傾向を示していた。70歳以上の割合は、2011年から2021年は62~65%であったが、2022年は増加した。菌が分離された検体*については、気道検体が4,811例(33%)と最も多く、次いで血液検体2,627例(18%)であった()。2013年以降の気道検体と血液検体が占める割合が高い傾向は、2022年も同様であった。

* 菌が分離された検体は検体採取部位として登録された情報を用い集計した(検体採取部位:複数部位から検出された場合は、最も重要と考えられる1か所のみが報告される)。

 

MRSA240423 f01

 

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MRSA240423 t02

 


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