国立感染症研究所 実地疫学研究センター
感染症疫学センター
2024年4月15日現在
(掲載日:2024年4月24日)

薬剤耐性緑膿菌感染症は、広域β-ラクタム剤、アミノ配糖体、フルオロキノロンの 3 系統の抗菌薬に対して耐性を示す緑膿菌(Multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa: MDRP)による感染症である。薬剤耐性緑膿菌感染症は、1999年4月に施行された感染症法では四類定点対象把握疾患に、また、2003年11月の感染症法の改正では五類定点把握対象疾患となり、現在、全国約500カ所の基幹定点医療機関(都道府県が指定した病床数300以上の内科又は外科を標榜する病院)の医師が薬剤耐性緑膿菌感染症と診断した場合、月単位で届出ることが義務付けられている。

薬剤耐性緑膿菌感染症の届出対象は、症状や所見から薬剤耐性緑膿菌感染症が疑われ、届出基準に規定された検査材料、検査により薬剤耐性緑膿菌感染症と診断された患者であり、臨床症状を示さず薬剤耐性緑膿菌を保菌しているだけの者は届出の対象外となっている(届出基準、届出票についてはhttps://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-42-01.html 参照)。なお、感染症法に基づく届出の基準として示されたMDRPの判定基準値は、病院で用いられている判定基準値と異なることがある(文末参考)。

2022年の薬剤耐性緑膿菌感染症の報告数は103例、定点当たり報告数は0.22だった(図1)。2000年(1.21)以降の定点当たり報告数の推移は、2003年(1.62)までは毎年、増加したが、それ以後は概ね減少傾向となり、2017年からはほぼ0.25前後で推移し、2022年もほぼ同様(0.22)であった。2022年は薬剤耐性緑膿菌感染症は、31都道府県の54基幹定点医療機関から報告され、これは、2022年に五類定点把握対象疾患を報告した基幹定点医療機関の月当たり平均数、479の約11%に相当した。各基幹定点医療機関が報告した薬剤耐性緑膿菌感染症の報告数は中央値1、最小値1、最大値14であり、33医療機関(61%)において報告数が1例のみであった。

2022年に報告された患者の性別は男性が66例(64%)と女性より多く、診断時年齢は70歳以上が67%であり、10歳未満の報告はなかった。性別および診断時年齢の分布は、2017年以降2022年まで、ほぼ同様の傾向を示していた(図2)。菌が分離された検体*については、気道検体が37例(36%)と最も多く、次いで尿検体29例(28%)、血液検体5例(5%)であった()。2013年から2018年にかけて30~35%で推移していた気道検体の割合は、2019年から2021年は20~28%に減少していたが、2022年は増加した。

*菌が分離された検体は検体採取部位として登録された情報を用い集計した(検体採取部位:複数部位から検出された場合は、最も重要と考えられる1か所のみが報告される)。

 

MDRP240423 f01

 

MDRP240423 f02

 

MDRP240423 t01

MDRP240423 t02

 


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