この会議はSociety for Industrial Microbiology (SIM)によって2〜3年毎に開催される国際会議であり、微生 物由来の医薬や農薬を指向した生理活性物質の探索、それらの生物活性、作用 機作、生合成、遺伝子工学などに関するトピックが発表される。
SIMは米国の応用微生物学会として1949年に創立され、今年で50周年を迎え る。年会以外に最近になって特定のトピックスに焦点を絞った特別会議を次々 と催しているが、そのさきがけとなったのがこのBMPであり、第1回は1988年に カリフォルニア州サンディエゴで開催され、故梅沢浜夫博士に捧げられた。つ づく第2回は1990年にフロリダ州サラソタで催されて故有馬 啓博士に捧げられ、 第3回は1993年にカリフォルニア州ローナート・パークでH. Z_hner博士を名誉 ゲストとして行われた。第4回は初めて米国から外に出ることになり、1995年4 月に神奈川県大磯で秦 藤樹博士、木下祝郎博士、H. B. Woodruff博士を名誉 ゲストに迎えて開かれた。さらに第5回は1997年ヴァージニア州ウィリアムズ バーグでA. L. Demain博士に捧げられて開催された。
第6回にあたる今回は5月16〜19日にカリフォルニア州サンディエゴのホテ ルで供田 洋博士(北里研)とSteven J. Gould博士(メルク)を大会長とし て開かれ、今回の会議は大村 智博士(北里研)に捧げられた。
今回の会場となったカタマラン・リゾートホテルはサンディエゴの北西 に位置しミッション湾に面したのどかな所であった。また対岸までも歩いてす ぐに行ける距離で、そちらは太平洋に面しておりサーフィンを楽しむ人たちで 賑わっていた。今大会も従来と同様に、参加者は同じホテルに宿泊して朝食か らバンケットに至るまで皆一緒に過ごし、常に活発な交流が行われるよう配慮 されていた。
「二次代謝産物の生合成における最近の発展」のセッションでは、アミ ノ糖、ペプチド、ポリケチドなどの生合成が取り上げられた。H. Setoは放線 菌のテルペン化合物にはメバロン酸経路と非メバロン酸経路から合成されるも のがあることを明らかにした。さらに非メバロン酸経路の鍵酵素である 1-deoxyxylulose 5-phosphate reductinoisomeraseは多くの細菌に必須で抗 菌薬のよいターゲットと考えられ、既知抗生物質fosmidomycinがその特異的 阻害剤であることを証明していた。「二次代謝の制御」のセッションでは、放 線菌の形態変化(胞子形成)や二次代謝産物生産に関与する低分子化合物がど のような機構でその情報を伝えていくかが話題の中心となった。 S. Horinouchiは、Aファクターを起点としてどのように遺伝子やタンパク質 が働くかを明らかにしていた。「新規天然リード化合物」のセッションでは、 H. Reichenbachはミクソバクテリアから多くの電子伝達阻害剤を見出していた。 A. Asaiは、Streptomyces sp.よりサイクリンA1による酵母の増殖停止を阻 害するペプチドのUCK14Aを単離した。この物質のターゲットはプロテアソー ムと考えられ、強い阻害を示すことから注目されていた。また J. J. Sanglierは7,600のブロスからサイクロスポリンAとサイクロフィリンの結 合を阻害するものをスクリーニングしてStreptomyces sp.より sanglifehrinを単離した。これはin vivoでも免疫抑制効果を示した。 M. HayashiはStreptomyces nitrosporeusの生産するIL-6活性抑制物質で あるmadindolineを報告していた。
最後の「genomics、bioinformaticsや新スクリーニング技術による医薬品 発見」のセッションでは、M. Sudoが抗真菌剤としてのキチン合成阻害剤探索 の話を紹介した。ポスターセッションは2日目の夕方の2時間が割り当てられた。 発表を大別すると天然物のスクリーニング・単離に関するものが18題、細菌、 真菌や遺伝子の生物学的多様性のテーマが5題、生理活性物質の生合成と作用 機作が3題ずつで、他に発酵や酵素の話題も見られた。全体の3分の1くらいが 放線菌に関係のある発表であった。
この会議は医薬、農薬をめざした新しい微生物代謝産物の探索を行って いる研究者にとって、その分野における最先端の海外の研究者の考え方や仕事 の進め方に触れることができる意味で有意義な会議であった。しかし米国から の発表ではアイデアだけで結果のないものやベンチャー企業の宣伝色の強いも のが目立ち、興味をひく結果の発表がもっと増えることが望まれる。次回の開 催地は未定であるが、21世紀の幕開けである2001年の春に開かれる予定で ある。
(北里研究所・生物機能研 塩見和朗)