国立感染症研究所

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マイコプラズマ肺炎に横紋筋融解症を合併した1例

(IASR Vol. 33 p. 268: 2012年10月号)

 

マイコプラズマ肺炎では、菌の侵襲によるものだけではなく、生体内で産生される過剰なサイトカインが重症化に関与するといわれており、サイトカイン抑制のための副腎皮質ホルモン(ステロイド)が治療に用いられる場合がある。

2011年に、日本全国でマイコプラズマ肺炎の入院患者を対象とした調査が行われた。この調査において、ステロイドの内服または静注による全身投与が23.6%の症例で行われていた(IASR 33: 162-163, 2012)。

ステロイドを使用するにあたり、高サイトカイン血症を考えるためのマーカーが役立つと思われるが、筆者は、ステロイドを投与した重症マイコプラズマ肺炎症例において、肺炎の重症化に深く関与すると考えられているインターロイキン18(IL-18)が高値(≧1,000 pg/ml)であったが、このIL-18はLDHとよく相関し、具体的には、LDH≧500 IU/lの場合、IL-18≧1,000 pg/mlであることを報告している1) 。

しかしながら、現在のところ、実際のステロイド投与の適応、投与量および投与期間などの具体的な指針は乏しく、今後の検討が望まれる。

Mycoplasma pneumoniae 感染症は肺炎のみならず、様々な肺外症状を起こしうることもしられている。筆者は、マイコプラズマ肺炎に、横紋筋融解症を合併した7歳女児の症例を経験し、報告した2) 。

発熱および咳嗽をきたし、アジスロマイシンを処方されたが臨床症状の改善を認めず、発熱後7日目、胸部レントゲンにて左上肺野に浸潤影を認め、入院となった。入院時尿潜血(3+)を認め[後日高ミオグロビン尿症(39,900 ng/ml)も判明]、かつ高CPK血症(12,159 IU/l)も認めた。

入院時、乏尿などの横紋筋融解症から引き起こされる症状はなく、フルオロキノロン系薬およびステロイド投与の他、安静、輸液にて経過を観察したところ、その後速やかに解熱し、他の症状の合併もなく、尿所見や血清CPK値も改善した。

M. pneumoniae 感染症において横紋筋融解症を起こす機序としては、血中のTNF-αやIL-1などの炎症性サイトカインが骨格筋の蛋白分解を起こすことが考えられている。本症例も、血清TNF-αの高値(3.48 pg/ml)や血清IL-18の高値(612 pg/ml)を認めており、これらのサイトカインが横紋筋融解症を起こす原因となったことが推測される。

現在のところ、マクロライド耐性株によるM. pneumoniae 感染症の肺外症状合併例の報告は少ない(他に、スティーブンス・ジョンソン症候群の症例が報告されている)。

本症例は、初期治療のマクロライド系抗菌薬投与も臨床症状の改善がなく、その間、サイトカイン過剰産生が引き起こされたと考えられ、今後、マクロライド耐性株の増加に伴い、本症例のような、マクロライド系抗菌薬による治療抵抗性の症例における肺外症状の合併例が増加する可能性もあり、注意深く監視する必要がある。

 

参考文献
1) Oishi T, et al., J Infect Chemother 17: 803-806, 2011
2) Oishi T, et al., Emerg Infect Dis 18: 849-851, 2012

 

新潟大学医歯学総合病院小児科 大石智洋

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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