ダニ媒介脳炎(ダニ媒介性脳炎, Tick-borne encephalitis: TBE)は, フラビウイルス科フラビウイルス属に分類されるTBEウイルス(TBEV)の感染によって起こるダニ媒介感染症である。TBEVは自然界においてマダニとげっ歯類との間に感染環が維持されており, ヒトへの感染は主にマダニの刺咬による。日本では, 1993年に国内初症例が北海道内から報告され(表1の症例1)1), 患者発生地域に生息するマダニ, 野ネズミおよび放し飼いのイヌ等から極東型TBEV(致命率:約30%)が分離された2,3)。その後, 2016年に2例目の患者が北海道内から報告され(表1の症例2), 当該患者は治療の甲斐なく亡くなった4)。