国立感染症研究所

広島市で検出されたノロウイルスGII.P16-GII.2の遺伝学的解析

 

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広島市で検出されたノロウイルスGII.P16-GII.2の遺伝学的解析

(掲載日 2017/02/01)(IASR Vol. 38 p.38-39: 2017年2月号)

広島市では、2016年の第42週以降、感染性胃腸炎の定点当たり報告数が増加し、第46週に24.63人/週とピークに達した。過去5シーズンと比較すると、最も流行の立ち上がりが早く、流行規模では2012/13シーズンに次いだ1)。2016/17シーズン(以下、今シーズンとする)は全国的に感染性胃腸炎の報告が多く、主要起因ウイルスとしてノロウイルス(NoV)GII.2が推定されている2)

今シーズン、本市においても散発胃腸炎や食中毒等の集団事例からGII.2が検出された。そこで、検出されたGII.2について、ORF1のRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)領域とORF2のP2ドメイン領域の遺伝子解析を実施し、過去の検出株との比較を行ったので報告する。

RdRp領域の解析にあたってはORF1/2ジャンクション領域で遺伝子組換えを起こしたキメラウイルスを検出するために、ORF1のRdRp領域からORF2のN/S領域にかけての一連の遺伝子を解析し、Norovirus genotyping toolにより型別分類を行った。また、P2ドメイン領域の解析は独自に設計したプライマーを用いた。

型別を行った結果、今シーズンに検出されたGII.2のRdRp領域はGII.P16に分類された。このGII.P16-GII.2のキメラウイルスは過去にも検出されており、これらの株も含めてRdRp領域のアミノ酸配列(213aa)に基づく近隣結合法による系統樹解析を行ったところ、過去の同遺伝子型の検出株とは異なるクラスターを形成した(図1)。一方、昨シーズン、GII.P16-GII.4 Sydney2012に分類されるGII.4のキメラウイルスの検出が報告されている3)。本市で今シーズン検出されたGII.P16-GII.2は、このGII.P16-GII.4 Sydney2012とRdRp領域において同じクラスターを形成し、アミノ酸配列での相同性は98.6~100%であった。以上のことから、今シーズン流行しているGII.P16- GII.2は、GII.P16-GII.4 Sydney2012との間で遺伝子組換えが生じている可能性も考えられた。

次に、P2ドメイン領域(146aa)の近隣結合法による系統樹解析結果を図2に示した。今シーズンの検出株は過去の検出株とは異なるサブクラスターに分類され、過去の検出株とのアミノ酸配列での相同性は95.9~97.9%であった。ORF2の341番目のアミノ酸は、過去の流行株と異なり、リシン(K)からアルギニン(R)へ変異していた。また、354、400番目のアミノ酸では既存の変異の消失(復帰変異)も認められた(図3)。

今シーズン流行しているGII.2では遺伝子組換えやP2ドメイン領域のアミノ酸変異等による性状の変化が推察される。これらの変化が流行状況にどのような影響を及ぼしたのか、その関連性について、今後も注視していきたい。

 

文献

広島市衛生研究所
 藤井慶樹 則常浩太 八島加八 山本美和子 松室信宏 石村勝之

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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