国立感染症研究所

従事者衣服からノロウイルスを検出した集団食中毒事例について―長野県

(掲載日 2012/4/10)
 
長野県内の弁当製造業者において調理従事者からの二次汚染が原因と思われるノロウイルス食中毒事例が発生したのでその概要を報告する。
 
2012年3月8日、O市立病院および市役所より食中毒様の症状を呈する職員が複数いる旨の連絡が管轄保健所にあった。保健所の調査によると、喫食者74名中54名が発症し、有症者はいずれも3月6~7日にかけて同市内弁当製造業者の製造した弁当を喫食しており、発症曲線は一峰性を示すピークが認められたことから単一曝露が疑われた。
 
当所において、調理従事者(2名)および有症者(11名)糞便についてリアルタイムPCR法によりウイルス検査を実施したところ、従事者1名、有症者10名よりノロウイルスGIIが検出された(幾何平均 従事者3.44×1012コピー数/g、有症者1.26×1012コピー数/g )。従事者および有症者から検出された3株においてnested PCR法でCapsid領域の一部(279base)を増幅し、ダイレクトシークエンス法で塩基配列を決定したところ、いずれのウイルス株もGII/4に属し99~100%相同性を示した。
 
保健所で感染経路の解明のために疫学調査を行ったところ、ノロウイルスが検出された調理従事者は3月6日より下痢・嘔吐等の症状を呈していたことが判明した。しかし、体調不良であったにもかかわらず、既に弁当の注文を受けていたことから、発症後も調理・製造を続けていた。当該従事者は、調理専用白衣等の使用はなく日常的に着用しているスウェットシャツのまま調理行為を行っており、3月7日もスウェットシャツで自宅および調理中も営業施設のトイレ(いずれも洋式・水洗)を使用していた。そこで、保健所では従事者衣服の汚染の可能性を考慮し、当該スウェットシャツを同月8日に回収してウイルス検査のために当所に搬入した。
 
当該スウェットシャツは、100%ポリエステル製の長袖で、肉眼的には特に糞便等で汚染されている部位は認められなかった。そこで、北島ら1) が報告しているトイレ使用時に最も糞便による汚染が考えられる右袖口、同袖下および左袖口(図1)を中心にノロウイルスの検出を試みた。RNA抽出用試料は、吉田ら2) が報告したダストからのノロウイルス抽出方法を参考に図2に示すとおり作製した。抽出用試料は全量(1ml)からRNA抽出を行い、DNase処理・逆転写後、リアルタイムPCR法を実施したところ、いずれの検体からもノロウイルスが検出された(幾何平均1.9×105コピー数/g)。さらにCapsid領域の増幅産物(279base)についてダイレクトシークエンスを行った結果、GII/4に属し糞便から検出されたウイルス株の同領域における塩基配列は100%一致した。
 
以上から、本事例は当該施設で製造された弁当による食中毒と断定された。調理従事者がトイレ使用時に糞便で衣服を汚染し、さらに衣服から調理器具、食品を二次汚染して食中毒の発生に繋がった可能性が強く示唆される事例であった。
 
 参考文献
1) 北島佳子, 他, H23年度全国食品衛生監視員協議会第51回関東ブロック研修大会抄録
2) 吉田徹也, 他, IASR 31: 317-319, 2010
 
長野県環境保全研究所感染症部
中沢春幸 小林広記 内山友里恵 畔上由佳* 上田ひろみ 笠原ひとみ 宮坂たつ子
藤田 暁
長野県諏訪保健福祉事務所(保健所)食品・生活衛生課
藤森義一 松本 泉 古屋智大** 伊沢幸光 小松 仁
*現 長野県北信保健福祉事務所 **現 厚生労働省監視安全課

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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