国立感染症研究所

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The Topic of This Month Vol.34 No.6(No.400)

レジオネラ症 2008.1~2012.12

(IASR Vol. 34 p. 155-157: 2013年6月号)

 

レジオネラ症は細胞内寄生性のグラム陰性桿菌であるレジオネラ属菌(Legionella spp.)による感染症で、菌は経気道感染して肺胞マクロファージに侵入し増殖する。病型には肺炎型と感冒様のポンティアック熱型とがある。高齢者や新生児、および免疫力低下をきたす疾患を有する者が本症のリスクグループである。ヒトからヒトへの感染はない。レジオネラ肺炎に特有な症状はないため、症状のみでは他の肺炎との鑑別は困難である。治療には、キノロン系やマクロライド系の抗菌薬が使用される。適切な抗菌薬の投与がない場合、急速に全身症状が悪化する例がある点に注意が必要である。レジオネラ属菌は一般的には水中や湿った土壌中などにアメーバ等の原虫類を宿主として存在し、20~45℃で繁殖し、36℃前後で最もよく繁殖する。本特集では2008~2012年のデータをまとめた。

患者発生状況:レジオネラ症は感染症法に基づく感染症発生動向調査において医師に全数届出が義務付けられている4類感染症である(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-04-39.html)。2008年1月~2012年12月末までに、31例の無症状病原体保有者を含む 4,081例が報告された(2013年5月15日現在)(表1)。初診年月日を月別に集計すると、患者発生の主なピークは梅雨期の7月であった(図1)。報告数は人口の多い都府県で多いが(http://www.nih.go.jp/niid/images/iasr/34/400/graph/f4002aj.gif)、罹患率は富山・石川、岡山・鳥取で高い(図2)。

患者の平均年齢は67.0歳(男性65.7歳、女性は72.5歳)で、0歳~103歳まで幅広く分布しているが、30歳未満は1.0%と少なかった(図3)。性別は男性が81%を占めており、米国の64%(2000~2009; MMWR 60: 1083-1086, 2011)より多い。

職業上の曝露では、採掘・建設業務従事者、金属材料製造作業者および輸送機械組立・修理作業者、運転手等が多い。症状は、発熱(92%)、肺炎(90%)、咳嗽(48%)、呼吸困難(44%)、意識障害(17%)、下痢(9.8%)、多臓器不全(8.5%)、腹痛(2.5%)が認められる。感染地域は、国内が3,962例(97%)、国外95例(2.3%)、不明24例(0.6%)であった。

診断法:レジオネラ症届出4,081例中、尿中抗原検出が3,928例(96%)、培養113例(2.8%)、血清抗体価の測定69例(1.7%)、PCR (LAMPを含む)62例(1.5%)、間接蛍光抗体法や酵素抗体法による病原体抗原の検出8例(0.2%)であった(複数の検査法が記載された例を含む)(表2)。尿中抗原検査はLegionella pneumophila血清群(SG)1のみの検出に限られるが、レジオネラ属菌を広く検出する迅速検査LAMPが2011年10月に保険適用され、2012年にLAMPが5例報告されている。

死亡は134例であった。また、初診日の情報が得られた4,023例のうち死亡129例の致命率は、初診から診断に至る日数が1~4日、5~7日、8日以上の場合、各々2.8%、4.2%、5.3%と上昇するので、早期診断が望まれる。

起因菌:上記の培養113例の他に、届出後に菌株が分離され、レファレンスセンターに分与された例(本号7ページ)等を加えると、病原体の分離例は合わせて261例であった。うちL. pneumophila SG1が起因菌と考えられる事例は216例であった。そのうち5例は混合感染で、内訳は2例では他菌種(L. feeleiiL. rubrilucens)が分離され、3例ではSG1 とそれ以外の血清群が同時に分離された(SG1とSG6が2例、SG1、6、9、型別不能の4株が1例)。SG1 以外のL.pneumophila が起因菌の事例は24例(SG2、SG3が各6例、SG6が4例、SG5、SG10、SG12が各2例、SG9、SG15が各1例)であった。他にL. londiniensisと、L. longbeachaeが分離された事例が各1例で、19例は起因菌不明である。

集団感染事例等:2008年1月入浴施設で2例(神戸市、IASR 29: 329-330, 2008)、2008年7月老人福祉施設で2例(岡山県、IASR 29: 330-331, 2008)、2009年10月ホテルの入浴設備で8例(岐阜県、IASR 31: 207-209, 2010)、2011年9月横浜市のスポーツクラブの入浴設備で9例、2012年11月旅館の入浴設備で3例(本号5ページ)、2012年11~12月日帰り温泉施設で9例(本号3ページ)の患者が報告された。その他、2008年2月~2012年11月にかけて、同一施設に関連し、あるいは一緒に旅行後に2~5例の患者が発症した13の集団感染疑い事例が認められた。また、2011年3月には東日本大震災時の感染事例があった(本号6ページ)。

対策:本症はレジオネラ属菌を含むエアロゾルや塵埃を吸入することにより発症する。感染源は、循環式浴槽、冷却塔、シャワー(IASR 31: 331-332, 2010 & 31: 332-333, 2010)、給湯系、修景水、加湿器(本号15ページ)や、太陽熱温水器(IASR 32: 113-115, 2011)、腐葉土(IASR 26: 221-222, 2005)等である。浴槽内の多孔質の天然鉱石がレジオネラの温床となることもある(IASR 29: 193-194, 2008)。

レジオネラ症防止対策の基本は、1)微生物の繁殖および生物膜等の生成の抑制、2)設備内に定着する生物膜の除去、3)エアロゾル飛散の抑制、4)外部からの菌の侵入の阻止、である。そのためには、1)水の消毒(本号14ページ)を行い、微生物培養あるいは迅速検査(本号11ページ)等で確認する。エアロゾルを直接吸引する恐れのある浴槽水等の衛生管理基準値は100 mL当たり10 CFU未満(不検出)である。2)浴槽壁や各種タンクの内面の清掃が必須である。現場での浴槽壁等のATP(アデノシン三リン酸)測定で、生物膜の除去を確認することができる(本号13ページ)。3)各種設備はエアロゾルの飛散を防ぐ構造が要求される。4)浴槽壁の洗浄作業や腐葉土の取り扱いには、防塵マスクを着用した慎重な作業が求められる。

本症の予防には、レジオネラ対策(厚生労働省)(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei25/)、建築物衛生(厚生労働省)(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei09/03.html)、第3版レジオネラ症防止指針(ビル管理教育センター)、貯湯式給湯設備の衛生管理の手引き第1版(全国水利用設備環境衛生協会)等に沿った適切な衛生管理が必須である。

感染拡大防止には、臨床検体と環境検体の双方から菌株を分離して、パルスフィールド・ゲル電気泳動やsequence-based typing(本号7ページ)を用いて感染源を特定し、消毒・設備撤去等の対策を講じることが重要である。

 

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