ウイルス第二部 第一室(腸管感染ウイルス室)の研究

 ウイルス第二部第一室では下痢症ウイルスの研究を行っています。
 下痢症ウイルスは感染性胃腸炎の原因ウイルスの総称です。


さまざまな下痢症ウイルス

 下痢や嘔吐を主徴とする胃腸炎を引き起こす主なウイルスを表にまとめました。
 感染して症状が出る場合(顕性感染)と感染しても症状が出ない場合(不顕性感染)とがあります。不顕性感染では無自覚に周囲にウイルスを広げる可能性があり、特に注意が必要です。
 表に記載のウイルス以外にも、胃腸炎を伴う感染症を引き起こすウイルスが存在します。

下痢症ウイルス属する「科」ゲノムウイルスの大きさ 特記事項など
ノロウイルス カリシウイルス科 プラス一本鎖RNA 38 nm 乳幼児や小児だけでなく、すべての年齢層で発症します。
多くの遺伝子型が存在します。
また、ウイルス性食中毒の主な原因となります。
サポウイルス カリシウイルス科 プラス一本鎖RNA 38 nm 主に乳幼児で発症します。
多くの遺伝子型が存在します。
ロタウイルス レオウイルス科 11分節二本鎖RNA 70 nm 2020年10月にロタウイルスワクチン定期接種に導入されました。
主に乳幼児の病原体ですが、まれに成人も発症します。
多くの遺伝子型が存在し、2種以上の異なるロタウイルス間で分節RNAの再編成によりリアソータント(再集合体)が生じ得ます。
アストロウイルス アストロウイルス科 プラス一本鎖RNA 28 nm 主に乳幼児で発症します。
アデノウイルス アデノウイルス科 二本鎖直鎖状DNA 80 nm 様々なアデノウイルスの中で、F種の40および41型は「腸管アデノウイルス」と呼ばれ、胃腸炎の原因となります。

私たちの研究が目指すもの

 なぜ下痢症ウイルスは下痢を引き起こすのでしょうか? 下痢症ウイルスによる感染症は治療したり、予防したりできるのでしょうか?

 ウイルスは標的細胞と相互作用して細胞内に入り、感染を成立させます。では、下痢症ウイルスは細胞の何を認識して細胞と相互作用するのでしょうか? どうやって細胞内に入り、どうやってウイルスゲノムを標的細胞に認識させ、ウイルスタンパク質を作らせ、また、ウイルスゲノムのコピーを作らせるのでしょうか? ウイルスタンパク質は標的細胞のどのような分子と相互作用し、細胞、組織にどのような変化をきたすのでしょうか? そのような変化がどのように下痢や嘔吐に結びついているのでしょうか? ウイルスそのもののコピーはどうやって作られるのでしょうか?

 このようなたくさんのなぜ? どうやって? をひとつひとつ明らかにしたいと考えています。
 ウイルス学に加えて、細胞生物学、分子生物学、生化学、構造生物学など、さまざまな観点から下痢症ウイルスの研究に取り組んでいます。

 すでに使われているロタウイルスワクチンのようなワクチンの開発がノロウイルス感染症予防のために世界で進められています。
 ワクチンだけでなく、治療や予防に使える「くすり」の候補となる化合物の探索やそれらの実用化に向けた研究にも取り組んでいます。

私たちの研究成果

 

 

 準備中

国立感染症研究所のページから

ノロウイルスについて

ロタウイルスについて

下痢症ウイルス全般


 下痢症ウイルスの研究に興味がありますか?
 問い合わせ先:第一室長 染谷( someya★niid.go.jp )
 (お手数ですが、”★”を”@”に変更して送信してください)

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