国立感染症研究所

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2011年の東京都におけるHIV感染者・AIDS患者の動向とHIV検査・相談の実績

(IASR Vol. 33 p. 233-235: 2012年9月号)

 

東京都におけるHIV感染者・AIDS患者の発生動向
平成23(2011)年に、新たに東京都に報告されたHIV感染者・AIDS患者の合計件数は409件で、前年(2010年)と比べ100件少なく2年ぶりの減少となった。特にAIDS患者は84件で、前年から23件減少し、過去10年で最も少ない報告数となった(図1)(東京都の報告数は発生届の保健所受理週で計上)。

新規HIV感染者・AIDS患者を国籍・性別でみると、日本国籍男性が 353件でもっとも多く86.3%を占めているが、前年に比べると93件の減少となった。日本国籍の女性と外国籍の男性と女性は、近年横ばいで推移している(図2)。

次に、推定感染経路別にみると、同性間性的接触が前年に比べ56件減少しているものの299件と最も多く、73.1%を占めている(図3)。

さらに、HIV感染者とAIDS患者それぞれの年齢別割合をみると、HIV感染者は30代が116件、20代が96件で20~30代に多く、AIDS患者では40代が31件、30代26件で30~40代に多くなっている。この傾向は例年と同様である。

都内におけるHIV検査件数と陽性件数について
2011年に、都内の保健所や検査・相談室(東京都南新宿検査・相談室、東京都多摩地域検査・相談室)で実施されたHIV検査件数は26,092件で、前年の25,249件に比べると843件増加し、3年ぶりの増加となった。一方、陽性件数は前年の178件から157件に減少した(図4)。

全国との比較から
2011年、全国ではHIV感染者が1,056件、AIDS患者が473件、合計1,529件が新たに報告された。このうち東京都が占める割合は、HIV感染者30.8%、AIDS患者17.8%、合計26.7%である。また、新規報告数全体に占めるAIDS患者の割合をみると、全国が約30.9%、東京都が20.5%と、東京都が全国に比べ低くなっている。

また、昨年の全国のHIV検査件数は131,243件で、前年の130,930件と比べると、313件の増加で東京都と同様である。しかし東京都以外の検査件数をみると105,151件で、前年の105,681件より530件の減少となっており、昨年の全国のHIV検査件数の増加は、東京都の検査件数の増加が反映された結果といえる。

まとめ
2011年、東京都では、HIV感染者、AIDS患者ともに新規報告数が減少となったが、これが、新たなHIV感染の減少、感染拡大の抑制を表しているとは、現段階では判断がつかないところである。

AIDS患者の減少は、HIV感染が早期に発見されているという良い兆候といえるが、HIV感染者の減少は必ずしもそうとはいえない。2011年の状況は、HIV検査への関心の低下などにより感染の可能性のある方が検査を受けず、新規感染者を発見できていないだけなのかもしれない。2011年、都内のHIV検査件数は増加したものの、検査件数が最多であった平成20(2008)年の31,345件には遠く及んでいない。

そのため、東京都としては、特に、個別施策層* の方が検査に関心を持ち、安心して検査を受けられるよう検査件数をさらに増やす取り組み(HIV検査のPRや受検しやすい環境づくり等)を続け、今後の動向を注意深く見守っていきたい。

*個別施策層とは、感染の可能性が疫学的に懸念されながらも、感染に関する正しい知識の入手が困難であったり、偏見や差別が存在している社会的背景等から、適切な保健医療サービスを受けていないと考えられるために施策の実施において特別な配慮を必要とする人々をいい、具体的には、青少年や外国人、MSM(男性間で性行為を行う者)などが挙げられる。

 

東京都福祉保健局健康安全部感染症対策課 野口雅美

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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