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真菌部 部長

宮﨑義継

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真菌症とは
  真菌症は、真菌が原因で起こる感染症やアレルギー性疾患の総称です。2022年に初めてWHOから公衆衛生上の課題となる病原真菌のリストが公表されたことから解るように、高齢化社会や格差社会、医療の高度化、気候変動など最近の世界的な社会や自然の変化にともない顕在化している世界的な健康対策の課題の一つとなっています。

新興真菌症
  カンジダ属の中のカンジダ・アウリスが世界的に院内・施設内感染のアウトブレイクをおこし一部は薬剤耐性であるため、ヒトーヒト感染をおこす重症感染症として世界的驚異と認識されています。国内でも死亡例が発生したことを契機に2023年に厚労省が自治体に通知を出し調査を開始しています。他にも、これまでに知られていなかった真菌症として2020年ころから健常なヒトに発症するクラドフィアロフォラ・バンチアナが国内でみられるようになりました。

従来より知られている重篤な真菌症
  真菌感染症には白癬のように誰にでも発症する場合と、免疫力の低下しているヒトに起こる場合があります。いずれの場合も肺、脳などに侵襲し重篤化する疾患があります。誰でも重篤化する真菌症として国内でみられるのは播種性クリプトコックス症です。本症の播種型は平成26年に感染症法で全数把握疾患に規定され、現在、国内での動向や疾病の性質が明らかになりつつあり、とくに高齢者では致命率が高いことが解ってきました。
  一方、何らかの病気がある場合に起こる代表的な真菌症はカンジダ症とアスペルギルス症です。カンジダ症は、血液から菌が生える極めて重篤な状態で「菌血症」の原因微生物として国内トップ5に入る頻度でありながら致命率が高く、臨床試験によりますが2020年代に実施された欧州の試験も約60%の致命率と重篤な感染症です。アスペルギルス症は、白血球が殆ど無くなるくらい重症の免疫低下があるときに発症する、早期に診断と治療が必要な疾患です。

真菌部の取り組みについて
  真菌部では、新しい真菌症をふくめて生命の脅威となる侵襲性の真菌症を主な研究対象とし、病気の重症化の原因を解明し、診断法と治療法につながる研究を第1優先として推進しています。
  直接的な社会への還元として、先端医療機関においても診断が困難な移植患者さん等の真菌症疑いの場合に、医療機関の主治医チームと連携して検査を通じた診断支援を行っています。
  2023年からは従来の活動を継続しながら、特にカンジダ・アウリス症の調査研究を強化しており、全国の地方衛生研究所と検査法の共有を行い国内検査体制の強化を図っています。

 

スタッフ・専門分野

部長
宮﨑義継(医学博士)昭和63年長崎大学医学部卒、平成19年より現職
          ;感染症学.医真菌学.呼吸器病学.内科学
          資格等:感染症指導医、呼吸器専門医.認定内科医
主任研究官
石川 淳(品質保証研究センター・病原体ゲノム解析研究センター併任)
藤本嗣人
協力研究員
岡本 圭祐(東京医科歯科大学医学部附属病院 小児科)
非常勤職員
福田惠子  担当;計画数学、医真菌学、外部精度管理事業事務局
安江恭子  担当;経理、文書管理
田中郁子  担当;外部精度管理事業事務局

令和6年5月2日
真菌部
宮﨑義継

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan