国立感染症研究所

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<速報> 8月に見られたAH3亜型インフルエンザウイルスの院内流行―大阪府

(掲載日 2012/9/20)

 

大阪府では8月に入りインフルエンザの院内集団感染が2事例発生し、うち1事例からAH3亜型ウイルスが分離されたので概要を報告する。

2012年8月7日に吹田保健所管内の病院からインフルエンザの院内集団感染事例の報告があった。報告時に、職員14名および入院患者3名が迅速診断キットにてA型インフルエンザと診断されており、そのうち職員3名および入院患者2名、計5名から咽頭ぬぐい液を採取した。これらについてリアルタイムRT-PCRを実施したところ、全検体からAH3亜型インフルエンザウイルスのHA遺伝子が検出された。

ウイルス分離はMDCK細胞を用いて行い、5検体ともに2代目継代後にCPEを観察した。得られた培養上清は0.75%モルモット赤血球を用いた赤血球凝集試験(HA試験)にてHA価32~128を示した。これらの分離株を国立感染症研究所より配布された2011/12シーズンインフルエンザウイルス同定キットを用い、HI試験による抗原解析を実施した。その結果、全株とも抗A/California/7/2009(H1N1pdm09)血清に対するHI価が10未満(ホモ価640)であったが、抗A/Victoria/210/2009(H3N2)血清に対するHI価は160(ホモ価1,280)を示した。

分離株のHA遺伝子HA1領域の塩基配列を決定し、系統樹解析を行ったところ、今回の分離株はすべて同一であり、Victoria/208クレードの3Bに属した。

当該病院では、今回感染が認められた職員はすべて2011年11月にインフルエンザワクチンを接種しており、また、夏季ということもあり、初発症例をインフルエンザと疑わないまま感染が拡大したと推測された。診断後、当該病院は面会制限や職員および入院患者への抗インフルエンザウイルス薬の予防投与等の対応を行った。その結果、8月10日以降新規発症は認めず、8月13日に終息とした。最終的に職員15名、入院患者7名の計22名がインフルエンザと診断された。また、初発症例には周囲のインフルエンザ様症状のある者との接触や、夏場のAH3の流行報告があった沖縄や南半球等流行地域での直近の滞在歴はなく、感染源は不明であった。なお、もう1つの院内集団感染事例からはリアルタイムRT-PCRにてAH3亜型インフルエンザウイルスのHA遺伝子が検出されたが、2事例に明らかな関連はなかった。

平常時より咳エチケットを含めた標準予防策を実施するとともに、夏季においても急性の呼吸器感染症が認められた場合にはインフルエンザも念頭に置き、早期に対応する必要があると考えられた。

大阪府立公衆衛生研究所
森川佐依子 廣井 聡 加瀬哲男
大阪府健康医療部保健医療室地域保健感染課感染症グループ
松井陽子 伊達啓子 大平文人 熊井優子
大阪府吹田保健所 
浅田留美子 一居 誠

 

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