国立感染症研究所

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2012年3月に検出されたC型インフルエンザウイルスの系統樹解析―三重県

(IASR Vol. 33 p. 199: 2012年7月号)

 

C型インフルエンザウイルス(InfC)は、インフルエンザウイルス(AH1pdm09、AH3、B型)の流行と同時期、あるいは春先に発生がみられる傾向がある。InfCの鑑別は臨床症状からは困難であるのでウイルス学的診断が必要である。そこで2012年3月に三重県内の感染症発生動向調査検査定点医療機関を受診し、呼吸器症状を示した患児40名から採取した気管吸入液、鼻汁および咽頭ぬぐい液を用いてInfCの動向調査を実施したので報告する。

ウイルス分離・検出
ウイルス分離はMDCK細胞を用いて実施した。検体を接種後7~10日間培養した培養上清を材料に、0.75%モルモット血球ならびに0.5%ニワトリ血球を用いて赤血球凝集(HA)活性を調べた。0.5%ニワトリ血球のみにHAを有した場合、InfC分離陽性の指標とした。1例がMDCK細胞に接種後2代目でニワトリ血球のみにHAを示した。同定には山形大学医学部感染症学講座から分与された抗C/AnnArbor/1/50(ウサギ免疫血清)を用いた赤血球凝集抑制(HI)試験を実施した。

RT-PCR法およびReal time-PCR法による検出は、Matsuzakiらの方法1,2)  を用いた。40検体のうち7検体(17.5%)からInfCが検出された。検出された患児の臨床症状等は表1に示した。臨床診断名は気管支炎3例、喉頭炎2例、咽頭炎1例、細気管支炎1例であった。

Hemagglutinin-Esterase(HE)遺伝子系統樹解析
InfCのHE蛋白は、抗原性の違いから5グループ(Yamagata/26/81、Kanagawa/1/76、Aichi/1/81、Mississippi/80、Sao Paulo/378/82)に分類される。2004年頃にはKanagawa76グループに属するInfCが国内各地で分離・検出され全国規模の流行が確認された1) 。本県で3月中旬~下旬に検出されたInfCのうち5例についてHE遺伝子系統樹解析を実施したところ、C/Sao Paulo/378/82株を代表とするSao Paulo82グループに分類された(図1)。

昨年、本県では肺炎を伴う入院例からInfCが検出されていることからも重症化の可能性に留意し、さらに多くの症例収集および解析を実施する必要性は高いと思われる。

また、国内でのInfC年間検出報告3) では、隔年で検出数の増減がみられているので、今後も継続的な動向調査を行い、InfC流行動態を把握する必要がある。

 

参考文献
1) Matsuzaki Y, et al ., J Clin Microbiol 45: 783-788, 2007
2) Matsuzaki Y, et al ., J Clin Virol 54: 130-134, 2012
3) 国立感染症研究所感染症情報センター(http://www0.nih.go.jp/niid/idsc/iasr/Byogentai/Pdf/data95j.pdf

 

三重県保健環境研究所
矢野拓弥 前田千恵 楠原 一 赤地重宏 松野由香里 山寺基子 永井佑樹 岩出義人
片山正彦 福田美和 中川由美子 高橋裕明 平岡 稔 山内昭則 山口哲夫
落合小児科医院 落合 仁
国立病院機構三重病院 庵原俊昭
山形大学医学部感染症学講座 松嵜葉子

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