国立感染症研究所

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2012年に手足口病、ヘルパンギーナ検体から検出されたエンテロウイルスについて―仙台市

(IASR Vol. 34 p. 9-10: 2013年1月号)

 

仙台市における手足口病の定点当たりの患者報告数は第26週から増加し始め、第37週でピークに達した後、第43週に警報終息基準値を下回るまで、流行が継続した(図1)。ヘルパンギーナの定点当たりの患者報告数は第27週から増加し始め、第31週でピークに達した後減少した(図2)。ピーク時の患者報告数は手足口病6.12人とヘルパンギーナ3.58人で、2011年(手足口病11.00人、ヘルパンギーナ6.38人)に比べ小規模の流行となった。また、ヘルパンギーナの患者報告数は全国平均より遅れてピークを形成した。

ウイルス分離・同定は、病原体定点で採取された咽頭ぬぐい液を、Vero、RD-A細胞(国立感染症研究所から分与)に接種し、37℃1週間培養し、3代目まで継代した。細胞培養にてCPEが認められた検体については、培養上清を精製後、国立感染症研究所から分与された抗血清で中和試験を試みた。また、検体(咽頭ぬぐい液)から市販のキットを用いてRNA を抽出し、CODEHOP PCR法1) により、VP1 領域の遺伝子を増幅した。増幅産物を精製後、ダイレクトシークエンス法により塩基配列を決定し、エンテロウイルスの遺伝子配列による型別分類webサービス(http://www.rivm.nl/mpf/enterovirus/typingtool)により血清型およびsubgenogroupの同定を行った。

2012年6~9月に感染症発生動向調査の病原体定点から、手足口病患者の検体(咽頭ぬぐい液)12検体が搬入され、8検体からRD-A細胞で3代目までにCPE が観察され、中和試験によりエンテロウイルス71型(EV71)と同定された。また、同じ8検体からEV71の遺伝子が検出され、遺伝子解析の結果、subgenogroup B5に7株が、C2に1株が分類された(図3)。

一方、ヘルパンギーナ患者の検体(咽頭ぬぐい液)は13検体搬入され、細胞培養によるウイルス分離を試みた9検体中5検体で、RD-A細胞で2代目までにCPE が観察され、中和試験によりコクサッキーウイルスA2型(CA2)とCA4が各々2検体から、CA5が1検体から分離された(表1)。また、遺伝子検査では13検体中10検体からエンテロウイルスの遺伝子が検出され、CA2とCA4が各々3検体から、CA5、CA6、CA9、EV71が各1検体から検出された(図3)。ヘルパンギーナの検体から検出されたEV71のsubgenogroupはB5であった。

2012年に仙台市内で手足口病患者から検出されたウイルスはEV71が中心であった。都道府県別病原体別手足口病由来ウイルス(IASR 2012年11月12日作成)では、関東以南ではCA16の検出報告が多く、EV71は東北地方を中心に報告されており、地域により流行する株が異なる傾向がみられた。また、検出されたEV71のsubgenogroupはB5に分類された株が大部分を占めた。2010年に検出されたEV71のsubgenogroupはC2であったことが報告されており2)、EV71のsubgenogroupは流行する年により異なることがうかがわれた。

一方、仙台市内でヘルパンギーナ患者から検出されたウイルスは、CA2、CA4、CA5、CA6、CA9、EV71と多岐にわたっていた。また、複数の株が検出されたCA2、CA4においては同じ血清型の株間においても相同性に差が認められ、EV71や昨年手足口病検体から検出したCA6と異なる傾向を示していた。さらに、CA6、CA9以外のウイルスは、RD-A細胞による分離が可能であったことから、手足口病、ヘルパンギーナ検体からのウイルス分離方法として有用であると考えられた。今後、分離株を用いて、VP1領域以外の遺伝子解析を進めていく予定である。

 

参考文献
1) Allan W, et al., J Clin Microbiol 44: 2698-2704, 2006
2) IASR 33: 57-58, 2012

 

仙台市衛生研究所
勝見正道 千田恭子 新木由美 関根雅夫 小黒美舎子 小林正裕
長谷川小児科医院 長谷川純男
かやば小児科医院 萱場 潤

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