国立感染症研究所

冷凍メンチによる腸管出血性大腸菌O157 VT2の食中毒検査について

 

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冷凍メンチによる腸管出血性大腸菌O157 VT2の食中毒検査について

(掲載日 2016/12/28)

2016(平成28)年10月17日から複数の腸管出血性大腸菌感染症発生届が保健福祉事務所に届出された(17日1名、21日1名、25日1名、26日6名)。届出先の保健福祉事務所における調査の結果、届出患者は同じ販売者の冷凍メンチを家庭で調理して喫食していることが判明した。

患者が購入した商品はそうざい半製品の冷凍メンチで、4個が合成樹脂製袋に入り冷凍された状態で販売されていたものであった。患者が当該製品を購入した店舗では当時、賞味期限の異なる3ロットを取り扱っていた可能性があり、当該製品は神奈川県内18店舗、千葉県内8店舗で販売されていた。

神奈川県衛生研究所における冷凍メンチからのO157検出には、増菌培地としてmEC培地およびノボビオシン加mEC(n-mEC)培地を用いてmEC培地は37℃ 18~24時間、n-mEC培地は42℃ 20~24時間で増菌培養後、分離培地に塗抹した。分離培養にはCT-SMAC培地、クロモアガーSTEC培地を用いて37℃ 18~24時間培養後にO157に特異的なコロニーの確認を行った。O157が疑われるコロニーがみられた場合には、TSI培地、SIM培地、リジン脱炭酸試験培地、VP試験培地、CLIG培地を用いて性状確認を行い、さらにオキシダーゼ反応試験、LAMP法によりベロトキシン(VT)産生遺伝子の検出、血清型の決定を行った。

初動調査で得られた3ロットの冷凍メンチを検査したところ、検査した3ロットのうち、賞味期限が2017.2.26の冷凍メンチ在庫品および患者宅残品よりO157 VT2産生株が検出された(表1)。冷凍メンチ在庫品より検出された菌株は、冷凍メンチより検出された菌株と患者分離菌株を当所微生物部でパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)を行い、遺伝子型が一致していることが確認された。

O157 VT2産生株が検出された冷凍メンチについては、冷凍メンチに含まれているO157の菌数を試験管5本ずつによる最確数算出法により調べた。試料25gを緩衝ペプトン水225mL中に懸濁させ試料原液(10倍希釈)とし、試料原液10mL、試料原液1mL、試料原液の10倍希釈液1mL、試料原液の100倍希釈液1mLをそれぞれ5本ずつ用意し、最確数を算出した1)。ただし、試料原液10mLの希釈には2倍濃度のn-mEC培地を用い、その他の希釈には通常濃度のn-mECを用いた。その結果、平塚保健福祉事務所から依頼された賞味期限2017.2.26のO157の菌数は、1,100/100gであり、小田原保健福祉事務所から依頼された患者宅残品は1,300/100gであった(表1)。

一方、衛生研究所に検査依頼された発症者および発症者の接触者からのO157検出には、便の10倍希釈液を直接分離用培地に塗抹するとともに増菌培地にも接種した。増菌培地としてはn-mEC培地のみを用いて42℃ 20~24時間培養した。分離用培地にはCT-SMAC培地、クロモアガーSTEC培地およびクロモアガーO157培地を用いて37℃ 18~24時間培養後にO157に特異的なコロニーの確認を行った。O157が疑われるコロニーが見られた場合には、冷凍メンチからの検出と同様な方法によりO157の同定を行った。2016年11月30日現在までの検査状況は、89検体を衛生研究所で検査した結果、16検体からO157 VT2産生株が検出された。詳細は表2に示した。

本事例においては、衛生研究所内に設置されている感染症情報センターからの情報を起点として、県の各保健福祉事務所保健予防課、食品衛生課、衛生研究所地域調査部、微生物部および県庁関連部署での情報共有をはじめとした効率の良い連携により、早期に感染源が特定されたため、発症者・接触者のフォローアップに、より迅速に対応することができた。

 

参考文献
  1. MPN値の算定法:食品衛生検査指針 微生物編, 社団法人日本食品衛生協会, 135-137, 2004

神奈川県衛生研究所地域調査部
 片山 丘 今井良美 寺西 大 佐多 辰 小松祐子 山﨑直美
神奈川県衛生研究所企画情報部(感染症情報センター)
 田坂雅子 高橋智恵子 中村廣志

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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