国立感染症研究所

疫学情報

感染症発生動向調査(IDWR)

病原微生物検出情報(IASR)

IDWRchumoku 注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。

◆梅毒 2015年第1〜53週と2016年第12週までの疫学的特徴

 

 2015年第1〜53週まで(2014年12月29日〜2016年1月3日)に診断され、感染症法に基づく医師の届出による梅毒として報告された症例数は2,698例(2016年3月30日時点、暫定値)であった。報告都道府県別では、東京都1,057例、大阪府324例、神奈川県165例、愛知県122例、埼玉県103例が多く報告された。性別は男性1,934例、女性764例であった。感染経路別では、男性は異性間性的接触が840例、同性間性的接触が585例の報告であった。また、女性の異性間性的接触は555例であった。病型は、感染早期の患者動向を反映し、最も感染力の高い早期顕症梅毒が、男性1,336例、女性422例であった。

 5歳毎の年齢分布として、男性は20〜54歳の各年齢群より報告されており(計1,640例:男性報告全体の85%)、最も割合の高い年齢群は40〜44歳(313例:男性報告全体の16%)であった。女性は15〜34歳の年齢群が女性報告全体に占める割合が7割(計538例)であり、20〜24歳(240例:女性報告全体の31%)が最も割合の高い年齢群であった。先天梅毒は13例が報告された。

 2016年第1〜12週まで(2016年1月4日〜3月27日)に診断され、梅毒として報告された症例数(2016年3月30日時点、暫定値)は796例で、昨年同時期(397例)の2.0倍であった。性別は男性563例、女性233例で、昨年同時期(男性289例、女性108例)のそれぞれ1.9倍、2.2倍であった。

 報告都道府県別では、東京都350例(前年同時期147例、2.4倍)、大阪府100例(同43例、2.3倍)、神奈川県44例(同29例、1.5倍)、愛知県37例(同14例、2.6倍)、埼玉県29例(同13例、2.2倍)が多く報告された。

 感染経路別では、男性は異性間性的接触が275例(昨年同時期105例、2.6倍)、同性間性的接触が158例(同104例、1.5倍)の報告であった。また、女性の異性間性的接触は177例(同73例、2.4倍)であった。

 早期顕症梅毒が、男性で411例(同166例、2.5倍)、女性で131例(同55例、2.4倍)とそれぞれ増加した。

 5歳毎の年齢分布として、男性は20〜54歳の各年齢群より報告されており(計477例:男性報告全体の85%)、最も割合の高い年齢群は40〜44歳(96例:男性報告全体の17%)であった。女性は15〜34歳の年齢群が女性報告全体に占める割合が約7割(計166例)であり、20〜24歳(75例:女性報告全体の32%)が最も割合の高い年齢群であった。先天梅毒は4例(昨年同時期3例)が報告された。

 2010年以降梅毒の報告数は増加傾向に転じており1)、本年3月までの報告は、昨年と同様な傾向で増加が継続している。全国的に増加がみられており、東京都と大阪府、そしてその周辺の地域からの報告が特に多い。昨年に引き続き、男女の異性間性的接触による報告数増加の傾向が続いており2)、母子伝播による先天梅毒の増加も懸念される。また、同性間性的接触による報告数も増加している。

 今後の梅毒の発生動向に引き続き注意しながら、特にリスクが高い集団に対する啓発活動が重要である3)。具体的には、不特定多数の人との性的接触はリスク因子であり、その際にコンドームを適切に使用しないことがリスクを高めること、オーラルセックスやアナルセックスでも感染すること、梅毒は終生免疫を得られず再感染することなどが啓発のポイントとして挙げられる3, 4)。感染が疑われる症状がみられた場合には、早期に医師の診断・治療を受けることが重要である。梅毒と診断した場合には、感染症法に基づく届出を行う必要がある。また、梅毒に感染していたとわかった場合は、周囲で感染の可能性がある方(パートナー等)と一緒に検査を行い、必要に応じて、一緒に治療を行うことが重要である。梅毒の感染経路、症状、治療、予防等に関しては、「梅毒に関するQ&A」(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou/qanda2.html)を参照されたい。

 

【参考文献】

1)IASR 梅毒2008〜2014年
http://www.nih.go.jp/niid/ja/syphilis-m/syphilis-iasrtpc/5404-tpc420-j.html
2)感染症発生動向調査週報(IDWR)「梅毒 2015年10月までの報告数増加と疫学的特徴」
http://www0.nih.go.jp/niid/idsc/idwr/IDWR2015/idwr2015-44.pdf
3)性感染症
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkakukansenshou/seikansenshou/index.html
4)性感染症に関する特定感染症予防指針の改正(概要)
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkakukansenshou/seikansenshou/dl/shishin-gaiyou.pdf

 

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