国立感染症研究所

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男性同性愛者における梅毒の再感染とHIVの共感染―米国・メリーランド州ボルチモア都市圏

(IASR Vol. 34 p. 273: 2013年9月号)

 

男性同性愛者(MSM)はHIVの新規感染のリスクであると同時に梅毒感染のリスクでもあり、米国での一期・二期の梅毒感染のうち72%がMSMでの発症である。米国メリーランド州ボルチモア都市圏は全米でも第2の梅毒罹患率、第6のHIV感染率を示しており、対策を講じるために、米CDCとメリーランド州、ボルチモア市、およびボルチモア郡が協力してMSMの中での梅毒とHIVのハイリスク群を同定することとした。2010年および2011年の性感染症およびHIVのサーベイランスデータと接触調査のための面接記録から、15歳以上のボルチモア市および郡に住むMSMで梅毒感染が疑われた者を調査した。460人のMSMの中で、初期梅毒は493例あり、92例(20%)は再感染が認められた。再感染のうち77(84%)は2007~2011年の間に2回感染、15(16%)は3回以上感染。直近2回の感染間隔は中央値18カ月で、26%の症例は1年以内の再感染だった。一期は5%、二期は41%、53%は不顕性感染だった。年齢は中央値30.5歳。再感染者のうち83例(90%)は黒人、85例(92%)はボルチモア市内に居住。79例(86%)はHIVの感染歴あり。二期で見つかる症例が多く、早期診断の機会がないことがうかがえる。梅毒の再感染はHIVを含む性感染症が伝播する危険な行動を続けていることを示唆している。梅毒再感染者へ包括的な感染対策(カウンセリング、コンドームや梅毒検査へのアクセス改善等)を優先的に提供することで、地域内のMSM 間での梅毒およびHIV拡散を弱められる可能性がある。

 

CDC, MMWR, 62 No.32, 649-650, 2013

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