国立感染症研究所

西アフリカ諸国におけるエボラ出血熱の流行に関するリスクアセスメント(2014年8月8日現在)

2014年8月8日
国立感染症研究所

〇事例の概要

エボラ出血熱は、エボラウイルスによる全身性感染症で病名が示す通り出血症状を呈することが多い。しかし、必ずしも出血症状を伴うわけではないことなどから、近年ではエボラウイルス病(Ebola virus disease: EVD)と呼称されることが多い。現在、西アフリカ諸国で起こっているEVDの流行は2014年3月にギニアで集団発生から始まり、住民の国境を越える移動により隣国のリベリア、シエラレオネへと流行地が拡大している。EVD患者の発生が継続しており、これまで知られている流行のうち最も大きな流行となっている。 これらの国を含む西アフリカ地域においては、EVDが確認されたのは1994年コートジボアールでEVD患者1名が確認されて以来のことで,EVDの流行が拡大したのは初めてのことである。なお、WHOは2014年8月8日に本事例をPublic Health Emergency of International Concern(国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態)とし、流行国等に更なる対応の強化を求めている。

 

〇疫学的所見

WHOの報告によると、2014年8月4日現在、EVD患者(疑い例を含む)の累計症例数は、総数で1711例、うち死亡例932例で致命率は54%。国別の内訳(報告国)は、ギニアで495例(死亡363例)、リベリアで516例(死亡282例)、シエラレオネで691例(死亡286例)、ナイジェリア9例(死亡1例)である。年齢・性別等の疫学情報は公表されていない。6月24日時点(総症例数618例)で、51例(8%)が医療従事者(国別内訳:ギニア28 例、リベリア3 例、シエラレオネ 20例)であった。ナイジェリアの死亡報告例は、リベリア人の40歳男性で、空路でリベリアからトーゴ、ガーナを経てナイジェリアに行き、渡航中に発症、ナイジェリアの病院でEVDと診断され、数日後に死亡した。現在、同症例の接触者調査が進んでいる。また、リベリアにおいては、2名の米国人医療従事者がEVDと診断された。

流行の第一波は、2014年の1月から3月に発生し、多くの症例がギニアから、またリベリアからも複数の症例が報告されている。一時、ギニアにおいては症例数が減少傾向であったが、第二波が2013年の5月に始まり現在まで持続し、ギニア・リベリア以外に、シエラレオネにおいても多数の症例が報告されている。

ギニアの初期の確定例15例(男性8例・女性7例、年齢範囲7~55歳、年齢中央値28歳)について記述されている論文1)によると、確定例の臨床症状は、発熱、下痢、嘔吐であり、検体を採取した段階では、ほとんどの症例で出血症状は認められていなかった(後に出現したかは不明)。15例中経過を追えた14例のうち12例が死亡(致命率86%)した。

〇ウイルス学的情報

EVDを引き起こすエボラウイルスには5つの亜属(ザイール、スーダン,ブンディブジョ、タイフォレスト、レストン)が存在し,レストンエボラウイルス以外はサハラ砂漠以南の熱帯雨林地域で発生したEVDの流行の原因となっている。今回の西アフリカで流行しているEVDの原因となっているエボラウイルスはザイールエボラウイルス(または,ザイールエボラウイルスに極めて近縁のエボラウイルス)による。5つの亜属の中でザイールエボラウイルスは最も強い病原性を示す。今回のEVD流行における致命率(約60%)がこれまでの流行に比較して高いのは、原因ウイルスの病原性が高いことに起因している。

〇国内対応

検疫所のホームページ等で情報提供を行い、ポスターによる注意喚起を実施するなど、渡航者、帰国者への注意喚起を行っている。外務省は、8月1日現在、国民に対してギニア、リベリア、シエラレオネの3か国への不要不急の渡航は控えることを勧めている。

〇リスクアセスメント

EVDの発生国が限定されていること、主として患者の体液等との直接の接触により感染することなどから、EVD症例が日本において探知される可能性は、現時点では極めて低い。

  • ギニア・リベリア・シエラレオネでは、EVD症例の増加と地理的な拡大が懸念されており、流行地の拡大などを含め、流行状況を慎重かつ継続して監視していくことが重要である。
  • EVD患者に対する医療・看護行為はEVDのリスク因子のひとつであることから、EVDの発生国でEVD対策に従事する場合は、必要な感染予防策をとること。
  • EVDの発生国において、通常の生活を通してEVDに感染するリスクは低いと考えられるが、現地では他人の体液・吐物・排泄物にできるだけ触れないようにすること。
  • 潜伏期間は最長3週間といわれているため、感染者が潜伏期間中に帰国し、帰国後にEVDを発症する可能性もある。EVD発生国から帰国後に発熱、嘔吐、下痢等の症状が出現した場合には、その有症状者は渡航歴を事前に伝えたうえで医療機関を受診するようにすること。
  • 国内の医療機関においては、EVDの発生国への渡航歴がある有症状者を診察する場合は、EVDの可能性も念頭に入れ、適切な感染予防策をとり、適宜、保健所へ相談すること。
  • EVD症例が国内で探知された場合は、EVD患者の体液・吐物・排泄物などには感染力のあるウイルスが含まれていることを踏まえて対策をとること。

参考文献

  1. Baize S et al, Emergence of Zaire Ebola Virus Disease in Guinea — Preliminary Report. N Engl J Med. 2014 Apr 16

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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