国立感染症研究所

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genome 2024 01
Distribution of antimicrobial resistance and virulence genes within the prophage-associated regions in nosocomial pathogens

Kohei Kondo, Mitsuoki Kawano, Motoyuki Sugai

mSphere
doi: 10.1128/mSphere.00452-21

薬剤耐性遺伝子や病原性遺伝子がプラスミドによって水平伝播することはよく知られているが、プロファージがそのような機能を担うかについての包括的な研究はほとんど存在しなかった。

我々は、病院内の薬剤耐性菌として問題となる7種の細菌のゲノム配列をNCBIから収集し、プロファージ様エレメント配列領域とその周辺に存在する薬剤耐性遺伝子および病原性遺伝子の分布を調べたところ、アミノグリコシドとβ-ラクタムの耐性遺伝子が比較的多く検出された。さらに、グラム陰性菌においてプロファージとインテグロンの隣接した配列が薬剤耐性遺伝子を共有する構造を見出した。

本論文は、米国微生物学会の2023年 Top-Cited Authorに選出された。

本研究は,独立行政法人日本医療研究開発機構(AMED)の「新興・再興感染症研究プログラム」(助成番号:20fk0108132j0001 and 21fk0108604j0001)の支援を受けて実施された。

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genome 2020 1国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センター

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新型コロナウイルスSARS-CoV-2のゲノム上にランダムに発生する変異箇所の足跡をトレースすることにより、感染リンクの過去を遡り積極的疫学調査を支援している。この調査により、これまでの経過は以下の様に説明できると考えている。中国発から地域固有の感染クラスターが発生し、“中国、湖北省、武漢” をキーワードに蓋然性の高い感染者・濃厚接触者をいち早く探知して抑え込むことができた。しかしながら、3月中旬から全国各地で欧州系統の同時多発流入により“感染リンク不明” の孤発例が検出されはじめた。数週間のうちに全国各地へ拡散して地域固有のクラスターが国内を侵食し、3−4月の感染拡大へ繋がったと考えられる。現場対策の尽力により一旦は収束の兆しを見せたが、6月の経済再開を契機に “若者を中心にした軽症(もしくは無症候)患者” が密かにつないだ感染リンクがここにきて一気に顕在化したものと推察される。隠れた感染リンクをいち早く探知するためにも、聞き取りによる実地疫学調査に加え、ゲノム分子疫学調査による拡散範囲を特定し、そのクラスター要因の特徴を示すことは今後の新型コロナ対策にとって必須だと考えている。
一方、本調査におけるゲノム情報は “鑑識” としての役割を担っているに過ぎず、聞き取り調査等の疫学情報無しでは成立しない。あくまで疫学調査を支援するひとつの支援材料であることを予めご留意いただきたい。塩基変異を足取りに “ゲノム情報を基礎にしたクラスター認定” を実施しているが、これは地域名や業種を特定して名指しするものではなく、あくまで患者としての成り立ちを “ウイルス分子疫学” として束ねてその共通因子を探る調査法である。現状、収束の見込みはあっても終息までにはさらなる時間を要すると思われる。今後、将来発生するクラスターを最小限に抑え込むためにも、ゲノム情報にてクラスター発生に至る要因を特定し、地方自治体への迅速な情報還元と効果的な感染症対策の構築を図っていく。

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genome 2020 1国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センター

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SARS-CoV-2のゲノム上にランダムに発生する変異箇所の足跡をトレースすることにより、感染リンクの過去を遡り積極的疫学調査を支援している。中国発の第1波においては地域固有の感染クラスターが乱立して発生し、“中国、湖北省、武漢” をキーワードに蓋然性の高い感染者を特定し、濃厚接触者をいち早く探知して抑え込むことができたと推測される。しかしながら、緻密な疫学調査により収束へと導くことができていた矢先、3月中旬から全国各地で “感染リンク不明” の孤発例が同時多発で検出されはじめた。このSARS-CoV-2 ハプロタイプ・ネットワーク図が示すように、渡航自粛が始まる3月中旬までに海外からの帰国者経由(海外旅行者、海外在留邦人)で “第2波” の流入を許し、数週間のうちに全国各地へ伝播して “渡航歴なし・リンク不明” の患者・無症状病原体保有者が増加したと推測される。この海外旅行者を契機とした同時多発と3月中旬以降の行動制限への理解が不十分だったことを鑑みても、由来元が不明な新型コロナウイルスが密かに国内を侵食し、現在の感染拡大へ繋がったと考えられる。

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The genome landscape of the African green monkey kidney-derived Vero cell line.

Osada N, Kohara A, Yamaji T, Hirayama N, Kasai F, Sekizuka T, Kuroda M, and Hanada K.

DNA Research, 21, 673-683, 2014

アフリカミドリザルの摘出腎臓から約半世紀前に日本国内で樹立された培養細胞株であるVero細胞は、多様なウイルスの増殖性がよく、さまざまな細菌毒素の感受性にも優れていることから、世界中で微生物学の研究だけでなく、病院での病原体検査や医薬品メーカによるウイルスワクチン生産にも汎用されてきました。

 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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