国立感染症研究所

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The Topic of This Month Vol.35 No.4(No.410)

麻疹 2014年3月現在

(IASR Vol. 35 p. 93-95: 2014年4月号)

 

麻疹は高熱、全身の発疹、カタル症状を特徴とするウイルス感染症で、肺炎、脳炎等を合併して死亡することもある。

2007年に発生した10~20代を中心とする全国流行を受けて、厚生労働省は2007年12月28日に「麻疹に関する特定感染症予防指針」(以下、予防指針)を告示した(本号4ページ)。2013年4月には予防指針が一部改正され、「2015年度までに麻疹の排除を達成し、WHOによる麻疹の排除の認定を受け、かつ、その後も麻疹の排除の状態を維持すること」が目標となった。

感染症発生動向調査:2008年に導入した、中学1年生と高校3年生相当年齢の者を対象とする2回目のワクチン(原則、麻疹風疹混合ワクチン)接種が功を奏し、麻疹の患者数は着実に減少した(図1)(参考図 2008~2011年: http://idsc.nih.go.jp/iasr/33/384/graph/f3841j.gif)。この結果、西太平洋地区における中国を中心とする2013年の大流行にもかかわらず(本号5ページ)、 2013年には国内では232(人口100万対1.8)となり、全数報告が始まった2008年以降の最低値となった(図2)。しかし、2013年10月頃からフィリピンでの患者増加を受け、輸入麻疹が全国各地で認められている(本号6、10、11ページ)。2014年は第12週(3月17~23日)までに206となり、過去6年間の同時期と比較して最多となっている(図2)(2014年3月26日現在)。医療機関で感染拡大した事例が各地で報告されているが(本号13、15、16ページ)、予防接種を含む迅速な対応により、2014年3月現在、大規模流行には至っていない。

麻疹脳炎は2013年に1人(1歳)、2014年は第12週までに1人(30代)報告された。

2013年の都道府県別報告数は、東京(67)、神奈川(34)、埼玉(27),愛知(24)、千葉(20)の順で、首都圏4都県で全体の64%を占めた。麻疹ゼロ報告は28県で、35道県が麻疹排除の指標(IASR 32: 34-36, 2011)人口 100万対1以下であった(2012年32道府県、2011年19県)。2014年(第12週時点)は、東京(34)、静岡(23)、千葉(22)、京都(21),埼玉(18)の順である。

年齢群別割合でみると(図3)、2008年に43%を占めた10代は、2013年には6%に減少し、2013年は20歳未満が全体の30%に減少した。しかし、2014年に入って、20歳未満の割合が再び増加し、第12週現在、57%を占めている。男女比は1:1であった(2013年は3:2で男性が多く、2013年に流行した風疹の紛れ込みが考えられた)。

2013年に報告された患者のワクチン接種歴は、未接種52(22%)、1回接種51(22%)、2回接種9(4%)、不明 120(52%)であった。0歳児は全員未接種、20歳以上は未接種21(13%)、不明111(68%)であった。2014年に報告された患者のワクチン接種歴は、第12週現在、未接種が113で全体の55%を占め、1回接種31,2回接種13,不明49であった。未接種の割合は、2008年以降で最多であった(図4)。

2013年の麻疹による学校休業報告は0件であったが、2014年1月と2月に高等学校と小学校がそれぞれ1校、臨時休校となった。

麻疹ウイルス分離・検出状況:2006~2008年に国内流行したD5型は、2010年5月を最後に検出されておらず、2009年以降検出されたウイルス型は、海外で流行しているD9、G3、D8、D4、H1型である(図5)。

2013年には国内で初めてB3型が検出され、その患者には発症前のタイ渡航歴があった(IASR 34: 201-202, 2013)。年間ではB3型が26で最多で、次いでD8型の14,H1型・D9型の各5が続いた。2013年7~8月にかけて複数の自治体でD8型が検出され、症例間の直接のリンクは証明されないものの、一つの流行であったと思われる(本号8ページ)。

2014年に入って、フィリピン渡航歴のある者からB3型の検出が急増し(本号6、10ページ)、2014年4月1日現在、139件報告されている。その他、D8型が9、D9型が6、H1型が2例、型不明3であった。

麻疹検査診断の重要性:2013年の届出患者のうち61例(26%)は臨床診断例であった。予防指針では臨床診断された時点で可能な限り早く報告し、その後全例の検査診断を実施して、検査診断されれば病型を検査診断例に変更し、麻疹が否定されれば、報告の取り下げを求めている。そのため、61例の臨床診断例は検査中であった可能性がある。これまで麻疹IgM抗体検査キットは、パルボウイルスB19による伝染性紅斑等の発疹性疾患の急性期に弱陽性(偽陽性)を示していたが、2014年からは偽陽性がほとんど見られないキットの使用が可能となっている。麻疹の場合、IgM抗体陽性を示すのは発疹出現後4~28日頃で、PCR法でウイルス遺伝子の検出あるいはウイルス分離可能なのは発疹出現後7日以内とされる(尿はこれより長期間PCR法で検出されることがある)(麻疹の検査診断の考え方:http://www.nih.go.jp/niid/images/idsc/disease/measles/pdf01/arugorizumu2014.pdf)。この期間を考慮しないと、麻疹であっても陰性の結果となることに注意しなければならない。

感染症流行予測調査(本号17ページ):WHO は、「麻疹排除達成にはすべての年齢コホートで95%以上の抗体保有率が必要」としている。2012年度に初めて2歳以上の全年齢群で抗体保有率が95%以上となったが、2013年度も2歳以上の多くの年齢群で95%以上の抗体保有率が維持されていた(図6)。1歳児の抗体保有率は2012年度の67%より9ポイント上昇して76%となった。

ワクチン接種率:日本における定期予防接種は、2006年度から原則麻疹風疹混合(MR)ワクチンを用いて、第1期(1歳児)、第2期(小学校就学前の1年間)の2回接種を実施している(IASR 27: 85-86, 2006)。2008年度から、第3期(中学1年相当年齢の者を対象)あるいは第4期(高校3年相当年齢の者を対象)として2回目の接種を行っていたが(IASR 29: 189-190, 2008)、この制度は2012年度で終了した。

2012年度の麻疹含有ワクチン(麻疹、MR)の全国接種率(第1期は2012年10月1日現在の1歳児の数、第2~4期は2012年4月1日現在の各期の接種対象年齢の者を母数とする)は第1、2、3、4期それぞれ98%(2011年度は95%)、94%(同93%)、89%(同88%)、83%(同81%)で、第1期は目標の95%以上を3年連続で達成した。しかし、2013年度上半期の第2期の接種率は36都府県で2012年度の上半期の接種率を下回っている(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou21/hashika.html)。

今後の対策:フィリピン等からの輸入麻疹が急増し、全国各地の医療機関や家族内で小規模の感染拡大が起こっている。2014年の特徴は、予防接種未接種者が半数以上を占め、検出される遺伝子型はB3が多いことである。また、10歳未満の割合が半数以上になっている。医療機関では、インフルエンザや風疹の流行中であっても常に麻疹を鑑別診断に入れて、渡航歴や予防接種歴の確認を行うとともに、麻疹が疑われる患者については、適切な感染拡大予防策を講じることが重要である。医療関係者は推奨回数である2回の予防接種を確実に受けておくことが望まれる。3月に入って海外渡航歴のない患者も増加し始めており、医療機関、保健所と地方衛生研究所・国立感染症研究所の連携を強化し、麻疹と臨床診断された患者全例について確実に検査診断を含む積極的疫学調査を行い、春から初夏にかけての流行を抑制する必要がある。海外から麻疹ウイルスを持ち帰らないためには、海外渡航前に予防接種を完了するよう、旅行者への啓発が引き続き必要である。

2014年の国内流行を予防し、2015年度までに麻疹を排除するためには、予防接種率を高めることで麻疹ウイルスが輸入されても広がらないように感受性者対策を徹底することと、「1例発生したらすぐ対応」により積極的疫学調査の迅速な実施と適切な感染拡大予防策を講じることが重要である。

 

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